時折休憩を入れつつ歩くこと半日、森の中を俺たちは進んでいた


「ここにくると思い出しますね・・・ダクネス」

「ああ、そうだな、まだいるのかな・・・」


めぐみんとダクネスが何かを思い出しながら話し始めた

俺はその会話に入り、尋ねた


「この森に何かいたの?」

「ええ、ここにはかつて・・・あっ!」


めぐみんが話そうとした瞬間、その何かを見つけ、声を発した


「カズマが始末したと思ったが、いたか・・・良かった」


めぐみんとダクネスが駆け寄ったその何かは、切り株に腰かけている少女だったが、よくみると身体は地面から生えていた

これは、ギルドから危険モンスターと警告を受けていた安楽少女だ

安楽少女は、目があった冒険者を儚げな眼差しで誘惑し、ずっと傍にいさせる

誘惑された冒険者は、空腹を感じても傍を離れようとしなくなり、やがて力尽きてしまった時には・・・

安楽少女に養分を吸い取られ、何も残らなくなってしまうという恐ろしいモンスターと聞いている


「めぐみん、ダクネス、これは安楽少女じゃないか?

近づいたら駄目だ!」


俺が警告すると、めぐみんとダクネスはおろおろしながら、


「し、しかしですね・・・この愛くるしい姿、何だか放っておくことが出来ないのです」

「しかもだな、以前、この場所で安楽少女に会った際、先を急いでいたので再会を誓って別れたのだが、カズマが一人戻り、焼き払ってしまったと聞いたのだ

だが、実のところ生き残っていたようだな・・・良かった、本当に良かった」



これはマズイ・・・二人が完全に安楽少女の虜になっている

俺は危機感を覚え、安楽少女の危険さを二人に訴えていると、不意に安楽少女が言葉を発した


「オニイサン、ワタシ、ワカッテル」

「な、なんだ!?こいつ喋るのか!?」


俺が驚いていると、安楽少女は続け、


「ワタシ、ミンナヲキケンニサラシテシマウ・・・

オニイサンノテデ、ワタシヲ・・・コロシテ・・・」



安楽少女は、涙を流しながら話した


「ああ!安楽少女!そんなことはしません!あなたを殺してしまうなんてこと、しませんよ!」

「そうだとも!キミを殺させはしない!」


めぐみんとダクネスは、完全に誘惑されてしまったようだ

俺がそのあとも必死に説得したが、聞く耳を持たなくなってしまった

仕方なく俺はスリープの魔法を二人にかけた



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