(必死で説明を繰り返していると、何とか信用してくれたようだ。帰るための手掛かりにならないかとこの場所の名前を教えて貰うと、聞いたこともない土地どころか、車中で読んでいた小説にも登場した土地だ。まさか…信じ難いけれど、ここは戦国時代らしい。戦国の世に妖怪がいたとは聞いたこともないが、他にも何か情報が得られないかと、自分についての話を続けた。そうしているうちに、少年も少しずつ自身についての情報を明かしてくれるようになった。強くなるために、こうして妖怪を倒しているという。確かに、見たところによるとかなり腕は立ちそうだ。だけど、そんな時にふと現代の車中でも抱いていた疑問が蘇ってきた。この少年は、何のために強くなろうとしているのか。本当に、強さを望んでいるのか。思わずそれを口にすると、少年の表情は一瞬強張ったように見えた)

…当たり前だろ。可笑しなこと聞く奴だぜ。

この戦国の世じゃ、強くなきゃ…人間なんか、一瞬でやられちまうんだよ。さっきのお前みてえにな。

(そう言った少年は、強くなることを楽しんでいるようには見えなかった。他人の心配などしている余裕も無いはずなのに、この少年が気になって仕方がない。何故強くなることを望むのか。何故そこまで強くなれたのか。何故、まだ子供なのに一人なのか。じっと見つめていると、その意図を取り違えたらしい。慰めるように、少年の手が頭に置かれた)

お前…帰り方が分からねぇんだろ?知ってる土地に出るまで、おれが面倒見てやろうか。


出会い5