おい、女。お前、いつの間に此処にいやがった。おれが来た時には、誰もいなかったはずだ。
(目の前の生物を全て片付けてしまった少年の関心は私の方に向いたらしい。話しかけてくる少年の語気に先ほどまでの激しさはないが、静かな言葉の裏には強い殺気を感じる)
可笑しな格好してるが…妖怪か、お前。
(突然見知らぬ場所に来てしまったこと。そこで見たこともない生物に襲われそうになったこと。人間離れした強さの少年に助けられたこと。そしてその少年から妖怪呼ばわりされていること。あまりにも多くのことが重なり、少年の問いに答えることすらできない。今になって増してきた恐怖感から、腰を抜かして立ち上がることが出来ずにいると、少年の拳が顔のすぐ横へと打ち込まれた。少年の拳は背後にあった巨木に入り、たった一撃で折られてしまった木が倒れる音が地に響く)
……なんだ、ただの女か。
(拳を避けることが出来るかどうか、反撃に出るかどうか、私の反応を試していたのか。私から興味を無くした様子の少年からは、殺気も消えていた)
こんなところ一人でうろついてちゃ、殺してくださいって言ってるみてえなもんだぜ。何せここは妖怪共の巣窟だからな。命が惜しけりゃ、とっとと村に帰りな。
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