─天領奉行府・訓練所─

皆のもの。それまで。


兵士一同「は!」(そわそわ)


……。

お前たち、今日の体たらくは一体どうした?


槍の一突きを見てもまるで気合いが入っていない。そんな心持ちで将軍様……引いては稲妻の国土を護る…勇猛なる幕府軍の 武士 モノノフ を名乗る気か?



兵士一同「も、申し訳ございません!」


もういい。今日の所は皆休め。


兵士「い、いえ!ここでやめるわけには…!(い、良いところを見せなければ💦)」


いや、呆れて言っているのではない。身の入らない鍛錬など毒だ。

時には休息も立派な鍛錬となる…。

その日の心身の状態を鑑みた計画を組むのも、また戦士に求められる資質だ。

見たところ全員が落ち着かない状態のようだからな。

指揮を担う者としてはお前たちの状態を考えた上での判断だ。従え。



兵士一同「さ、流石は九条裟羅様だ…!仰せの通りに!」

───────

─────

───




兵士A「くっそー、九条裟羅様にはまるでその気は無いみたいだな〜」

兵士B「ああ、鎖国が終わって、離島ではバレンタインってのが流行ってるって聞いたのになぁ」


兵士C「勘定奉行は交易を担ってるからな。あそこじゃ普通にチョコを渡し合ってるらしい」

兵士A「それに社奉行もだ。なんでもあそこの家司はモンド出身らしくてな。鎖国より前からバレンタインの存在を知ってて、内々ではあの白鷺の姫様からチョコレートが貰えるらしい…!」


兵士B「はは、とは言えあそこはこことは真逆で殆ど女手しかいないからなぁ〜。男なんて当主の若様と家司くらいなもんだろう?」

兵士C「俺たちも、あの九条裟羅様からチョコレートを貰えたらなぁ…俺なら一生の家宝にするぜ!」


兵士A「そんなの俺だって同じだ!だが義理チョコなんて軟派な物を作るお方じゃない。あの人が作るとするなら本命に違いない」

兵士B「九条裟羅様からの本命かぁ〜…。考えただけでヨダレが出てくるな」


兵士C「貴様は何を想像してるんだ…と言いたいところだが、確かに…。だけどよ、あの方からそんなもの貰えるなんて、夢のまた夢なんだろうなぁ…」


兵士A「いいや!俺は諦めないね!こうして休めと言われても尚、一人訓練を続ければその姿を見た九条裟羅様は…」


兵士B「…!こ、こうしちゃいられない!俺は訓練所に戻るぞ!」

兵士A「抜け駆けは許さないぞ!裟羅様のチョコは俺のもんだ!」



裟羅バレンタイン番外編