(空気に満ちるのは、幾人もが触れた古紙の匂いと蛍光灯に焼かれた埃の匂い)
(時折ひそめく他生徒の声をBGMとしながら、シャーペンを走らせていく)
(ふと、視界の端に覚えのある銀色が通り抜けた気がして顔を上げる)
(やっぱり仁王くんだ。こんな時間にどうしたんだろう)
(他の人の邪魔にならないようにそろそろと窓伝いに移動すれば、木が作る陰の下の仁王くんは、膝に猫を乗せた姿勢で目を閉じていた)
(なるほど、サボりスポットの一つなのか)
(不意に上げられた狐顔が緩んだのを見る辺り、私の行動含めた全部が予想通りだったらしい)
(何はともあれ、ちょっと珍しいものが見れたな……)
(さてと、もう少し頑張るか)
図書室で勉強する