父は、その眉目秀麗な容姿に合わず、気性が荒く強欲で、酷く嗜虐的だった。
母は、政界の女王蜂とまで言われた。
父同様、美しかった。
だが、傲慢で、自分の手は絶対に汚さなかった。
他の奴を使って、気にくわない奴を始末する。
それが女王蜂と呼ばれる由縁だった。
だが、再三言っておく。
二人は、美しかった。
暴君は、政界の貴公子なんて呼ばれるほどその顔を好かれていた。
父は、所々伸ばされた銀髪をいつも揺らしていた。
どす黒い紅の瞳で私を見ては、殴り、笑っていた。
母は、日本人離れした父に比べ、大和撫子のような人だった。
顔は。
あの白い肌に、鮮やかで蝶の刺繍が施された赤い着物は良く似合っていた。
いつも、男を誘うように、花魁のように着物をはだけさせていた。
そこから覗く足も、細くて、白くて。
それで、蹴られていた。
髪は青くて、胸元まであった気がする。
くすんだような、宝石のような橙色の瞳に男は見つめられる度息を呑んでいた。
私達には、わかり得ない感覚だ。
私たちが知っているのは、嗜虐と支配欲に埋もれている歪んだ笑みだけ。
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