豹那「グルルルルッ...!」


豹羅「...」


(呼び掛けても、返事はない。
獣特有の唸りを上げるだけだ。


姉貴が、襲われていた。
その瞬間をみた刹那、豹那の中で何かがキレたのは火を見るより明らか。

姉貴を襲っていた男の目を衝撃波で潰し、姉貴が汚れないように男を蹴り飛ばしていた。
兄貴と姉貴が居なくなりゃ、豹那の領域だ。

衝撃波で内を壊して、踏みつけて外を壊して。
それでも、命を奪いはしない。
それは殺してはならないという理性なんかじゃねぇ。

拷問を、楽しんでいる。

暴君や女王蜂と同じ、苦しむ顔を見て、無様な体を見て、笑っている。


姉貴は豹那のすべてだ。
だから、そんな姉貴を汚そうとした男が許せないのはわかる。
俺だって同じだ。

だが、豹那と同じことはできない。邪魔をするなと噛みつかれる。


今の豹那は獣だ)



竜也「...あれ、もう死ぬまで秒読みか」

狼華「豹姉...あそこまでキレてるの久々だ...」

豹羅「...豹那!」


豹那「シャアアッ...!!」


豹羅「やめろ、無駄だ。
もう死んでる」



豹那「...!
っはぁ...ぁぁ...」


(俺の言葉で落ち着いたようで、少しずつ豹那が動きを止める。
目の紅もおさまっている。

やっと、豹那は自分の手を見つめた。
自分を見直せるほど、落ち着いた。


身体中に返り血が着いている。
スーツも血みどろだ。
踏みつけていたブーツはもっと酷い)



豹那「ぁ...また...やって、し、まった...」

豹羅「ホラ」


(竜也が取ってきた水色のタオルを頭からかぶせれば、自分から深くかぶって表情を隠す。

破壊獣は宿り主の気性を荒くする。
今までは豹那自身が破壊獣の気質を抑え込んでいた。
言わば飼い慣らしていた。

だが、強く深い憤怒を感じたとき、破壊獣は好機と暴れ豹変する)


豹羅「...まぁ、お前がやらなきゃ俺らがやってたことだ。
今回はしゃーない、気負うな」


豹那「っ...!
お姉様は...!」

竜也「兄ちゃんが連れてった。
大丈夫だぜ」


豹那「...良かった...。

醜い私が、見られなくて......」


△豹那、助けてくれてありがとう。怪我はない?心配かけてごめんね...




豹羅「オイ、豹那」