『____この学園に、一般人が舞い込むなんざなァ...。
ッハ、おもしれェや。
ちょうど退屈してたんだよ。

なァ。
極々普通の、どっこにでもいそうなお嬢さん。




貴女の、名前は?』




((そう言っていた、あの日の豹那さんは本当に綺麗だった。
あの人は、初めてあったときから本当に美しかった。

言葉は荒いし、人を平気で口汚く罵る。
人を叩いたり殴ったり蹴ったりする。

それなのに。

佇まいは凛としていて品がよく。
陽の光を浴びて銀のメッシュが輝く様は美しく。
まるで、一枚の絵画のようだ。

よく見ると、少し子供っぽいところもあるし。
意外に寂しがり屋で兄弟が大好き。
負けず嫌いですぐ双子の兄に当たり散らす。




そんな貴女は、何度も私の命を拾ってきてくれた。
だから離れられなかったのに____))





『__下を向いている暇が何処にある、愚か者』



((その言葉に、顔をあげた。

私を背中に乗せ今も疾走しつつ
獣は冷たい言葉を吐く。

その物言いが、豹那さんに重なった))



『仮にもこの我の宿主になったのであれば、凛として前を向け。


あの小娘を無下にでもするというのなら、話は別だが』



((ッ...ふざけないで...!
豹那さんは...!!))



『自らを犠牲に、貴様を逃がした。



だが、死ぬ気ではない』



((___え....?))


『あの小娘は酔狂且つ狡猾な女だ。
精神安定剤から命を奪う原因をつくった者。
即ちはこのゲームの主催者を殺すまで死なん。


アレがそういう女だというのは、貴様が一番よく知っているはずだが?』



((そうだ。
豹那さんは、こんな簡単に負けない。
誰よりも負けず嫌いな彼女が、簡単に死を選ぶものか。


溢れる涙を、ぐいっと拭いた。
それでも溢れそうになるから、獣___破壊獣の体にしがみつく。

意外にもさらさらでもふもふなその体に身を預けた))



『...フン。
それで良い。
少しはましな面構えになったな』



((...うん。

ありがとう...))



『ヒトに礼など言われても腹は満ちん。
そんな幸福感を見せられたら、むしろ我は腹がすく。


まぁ、それは後程だ。


あの小娘からは場所しか聞かされておらん。
番犬の娘の元へ行け、とな』



((...レナさんのところだ。

豹那さんは、レナさんを本当に信頼している。
きっと私達を向かわせるのもその証だ))
















『エスレィティナの元へ向かう』で続きが読めます。








あの人は、違う強さがある




終幕・7