豹那「...」
(盗み聞きする気なんざサラサラなかった。
ただ、近くを通っただけだ。
いつか父親という存在に疑念をもつとは思っていた。
まさか、そんな方向で向くなんて思わなかったが。
兄さんの、父親でなくても一緒にいられるんだから。
あの言葉はまるであてつけだ。
何も知らない月子を騙す私へのな。
別に母親でなくたっていいんだから。
でも、私はあの子の母親でいたい。
母親という存在になりたいんだ。
あんな幼子に、私と同じ目をさせてたまるか。
月子は、ただ笑っていてくれりゃそれでいい...)
父親でなくたって