((町の風景には、何処か見覚えがあった。
多分住んでたからだよね))


「そうそう、家の近くにはスーパーがあるの。
結構大きいのよ。

ついでだし寄っていきましょう!」


((母の言葉で、スーパーに寄った。


色々売ってたけど、どれも目ぼしいとは思えなかった。
最後に果実のコーナーに入ったとき、母が顔を歪めた。

果実が、宙に浮いていた。
果実は私の頭上を通り越し、後方にいた同い年ぐらいの少年の手に収まる))


「やぁね、能力者だわ」


((...の、うりょく、しゃ...?))


「あそこにいる子みたいに、不思議な力を持った人のことよ。
気持ち悪いわ...」


((母同様、周りの人は果実を持った子を怪訝な目で見ていた。
自分の子供を遠ざける大人もいる。
でも、果実を持った子は気にせず他の果実を見ていた。

能力者は、嫌われてるんだ...。


少し理不尽な扱いにモヤモヤしていたとき、見つけた。

その人は、周りとはちがくて表情を歪めることなく果実、林檎を見つめていた。
不思議な感じで切られた髪を揺らして、顔の半分は包帯が巻かれている。

お母さん、あの人...))


「...気にしてないってことは、あの子も能力者なのよ。
まったく、政府は何で手離しにするのかしら...」


「...あ、会長だー」


「今は会長って呼ぶな」


((果実を持った子は、林檎を見つめていた人に近寄って声をかけた。
それを林檎の人が制してる。

...会長...?

あれ...?
私...私...?))



「...あの」


((頭がぐるぐるして、何も考えられなくなっていたとき。
林檎を見つめていた人が私を見て声をかけてきた))


「ちょっと。
うちの子に何か?」


((母と父が私を庇うように前に出る。
二人の隙間から見える、その人。

あの、感情のなさげな目を私はしってる...?))



「いえ、お嬢様に用があるわけではなく。
お嬢様の後ろの蜜柑、ほしくて」


((その言葉に従うように、手を後ろにやった。
私の手に、ひんやりした蜜柑の感覚が伝わってくる。

手探りで、でも、どこか的確に。

美味しそう、そう思える手触りの蜜柑を差し出した。
その人は表情をかえず蜜柑を見つめている。

やがて、小さなお礼のあと私から蜜柑を受け取った))



「暴君の.....化け猫。
行きますよ」



「...あぁ。

失礼いたしました」


((離れたところから、黒いコートに軍帽をかぶった人に呼び掛けられてその人は踵を返した。

カツカツ、響く黒いブーツのヒールの音。
動作に合わせて揺れる髪。
着古された黒いコートと、安物っぽい紫のワイシャツ、ネクタイ、ベスト。


美しいあの人は、まるで散らない桜のよう。
何故か、そう思った))



夕方、親に気づかれないように一人で散歩に出る微グロ注意




散歩に行く