((理由はない。
ただ一人で歩きたかった。
お母さんとお父さんは私に、能力者について色々教えてくれた。
政府の条例で、能力者にも人権があると認められており差別や殺傷は罰せられる。
ただ、偏見はあり基本能力者はその力を隠している。
中には能力者を知らない人もいるようだ。
同じ人間なのに、蔑まれて。
能力者は、苦しくないのかな。
能力者なら、一般人手にかけるの赤子の手を捻るより簡単だろうに。
...違う。
それじゃ、偏見の通りになっちゃうんだ。
だから歯を食い縛るんだ))
「オイ、そこのお前」
((ぼーっとしていたからか、気が付けば知らない路地裏だった。
声の方に振り返れば、ちょっとヤバめの集団))
「一般人だな。
こんな時間にこんなところにのこのこ迷い込みやがって、平和ボケしたもんだ!」
((その言葉で、彼らは能力者なんだと悟った。
一般人には白い目で見られ、能力者同士で争うこともあるなかを生きている彼らからすれば、確かに一般人は平和ボケしている))
「俺はお前みてぇな平々凡々で当たり前のように生きている奴みてると腹が立つんだよ!!」
((ひどい暴言。
でも。
否定できない。
言い返さない私に余計に腹が立ったのか。
彼らのリーダーらしき人物が私に掌を向けた。
次第に彼の掌は熱を持ったのか赤くなり、掌の上で炎が揺らめく。
逃げなきゃ。
逃げなきゃ))
「ぶっ殺してやるよ!!
人間なんざ吐いて捨てるほどいんだ!
テメェ一人死んでも誰もこm」
ブチャッ...
((彼の声が止まって、口から赤黒い泡が溢れてきた。
彼の背後で、暗い紫の何かが蠢く。
それが離れると、彼は口と胸元を血で染めながら仰向けで倒れた))「
能力者はクソほどすくねぇが、貴様のようなならず者共居なくなったとて誰一人困らないだろ」
((明確な怒気を孕んだ声に、視線をあげた。
廃ビルの屋上で、あのスーパーの女性が私達を見下ろしていた。
リーダーらしき人物の心臓を貫いていたであろう暗い紫の物体は、シュルシュルと女性の背中の辺りに仕舞われていった。
知っている))
夕方、親に気づかれないように一人で散歩に出る