((長らく車を走らせて、やっと屋敷に着く頃、空は茜色だった。
闇之本家はどの家よりも広く、大きく、威厳のようなものがあった。
車を屋敷内の敷地に止めて降りると、初老の女性が駆け寄ってきた。
黒い着物に身を包んでいて、白髪混じりの髪はお団子にされている))
「虎幸様、豹羅様、豹那様、竜也様、狼華様。
よくぞおいでくださいました」虎幸「...お疲れ様、ヨネさん」((誰だこの人と思っていると、豹羅さんの声が頭に流れてきた。
多分、この人の能力だろう。
豹羅さん曰く、初老の女性は暴君が生まれる前から屋敷に使えているらしい。
所謂小間使いさんだ。
名前はヨネさん。
使用人の中では一番の権限があるっぽい。
豹那さんは心の中でゾンビババァって呼んでるんだって。
虎幸さんと一言二言交えていたヨネさんが、突然私を見た))
「豹那様、先のお電話で仰られていたのは此方の?」豹那「...そうです。
月子と言って、学園に置いておくわけにもいかず連れてきました」
((豹那さんは説明しながら私を後ろ手で押した。
よろけてそのまま竜也君の背中に隠される))豹那「部屋は一緒で構わないわ。
料理だけ一食増やしてちょうだい」
「すでに手配は。
まずはご先代にお目通りを」豹那「目通りはともかく、月子は良いでしょう」
「いいえ、なりません」
((今日、豹那さんが初めて悔しそうな顔をした。
私を考えて、あんな顔してくれてるんだよね。
私は豹那さんのコートの裾をつかんで伝えた))「大丈夫です、行きましょう」