((奥の間、と呼ばれる部屋の前についた。
外観や内装に合わず、そこだけは和室のようだ。
豹那さんを中心に、襖の前で姿勢を整え声をかけた))豹那「...四十八代目、お祖父様。
豹那で御座います。
虎幸らも此におります」
((豹那さんの凛とした声のあと、威厳に満ちた厳しそうな声が返って来た。
入りなさい。と。
豹那さんは短く返事をして、襖を開けた))豹那「...お祖父様」
((中には、白の混じった若草色の髪をオールバックにした男性だけいた。
体はがっちしていて、黒いスーツは彼の威厳を引き立てる。
初老、と言うには若い感じのする男性だ。
この人がおじいさんということは、暴君のお父さんだろう。
確かに、祖父にしてはやや若い。
男性は豹那さんをじっと見たあと、私に視線をやった))
「それか、お前達が連れてきた客人は」豹那「...はい、お祖父様」
「...豹那、立て」
((豹那さんのおじいさんは、豹那さんを立たせて自分の前においた。
そのまま、かたく握られた拳を振り上げる。
あ、と思う頃にはもう遅くて))バキィッ((痛々しい音がなって、豹那さんの体が揺れた。
倒れることはなかったし後ろ姿でわからないが、きっとあの白い頬は腫れてるはずだ。
孫娘に手をあげるなんて。
考えられない。
非現実的な、現実が、目の前にある))
「親族会は遊びではない。
闇之の名も持たない奴を連れてくるとは良い度胸ではないか」豹那「...」
((豹那さん。
何でなにも言わないの?
皆、何で何もしないの?
今すぐでも、駆け寄りたいのに。
そう思っているのを、察したのだろうか。
竜也君が痛いくらいの力で私の手を握ってきた。
やめろ、手を出すな。
気持ちはわかるがダメだ。
そんな思いが伝わって、見てるしかなかった))
「...もう良い、行け。
滞在は許す」豹那「...ありがとうございます」
((深くお辞儀をして、豹那さんが退室する。
ゆっくり襖を閉めるその手は、震えていた))部屋へ
一緒に奥の間