狼華「っむ、むっすめぇえええええ!!!!?」
((学園に帰りつき経緯を話して早々この騒ぎだ。
ひとまず狼華、テメェはうるせぇ黙ってろ))
竜也「でも姉ちゃん子供苦手だろ!?
どう見たってそいつ赤ん坊だぞ!?
触れんのかよ!?」
豹那「いやねいったい何年前の話よ。
普通に抱っこできるわよ。
脆いから苦手なだけ。
そばにおいておけば、きっとなれるわ」
虎幸「...豹那。
分かってるんだよね?
その子はぬいぐるみでもお人形でもない、生きているんだよ?
これから一番手がかかるんだよ?
寝る時間なんか当然減るし、君は仕事も疎かに出来ないんだ。
其をわかっているのか?」
((いつも優しいお兄ちゃんの目は、今日は少し怖かった。
それは、きっと、私と同じで多くの命を奪ってしまったことがあるからこそできる目であり、言える言葉。
そう。
今私の中で眠るこの子は、命だ。
愛情の塊で、護られるべきもの。
この子を護るためなら、なんだってできてしまえそうだと思うのは、庇護欲からだろうか))
豹那「...泥水飲んで餓えを凌いでいた頃に比べりゃ、屁でもねぇさ」
虎幸「それとこれとじゃ話が...!!
だいたい何で母親のポジションなんだい!?
せめて姉とかあるじゃないか。
若すぎる母親は...」
((食い下がるのは、それほど心配をしてくれているからだ。
大丈夫、大丈夫だよお兄ちゃん。
その思いを込めて、尻尾で兄を制した。
確かに、血の繋がらない姉とか、世話係とか、母親っていう立場にこだわる必要はない。
普通はそうだ。
でも、私はそうしたくない))
豹那「...自分の親がさ、自分のために一生懸命アレコレやってくれるのって嬉しいと思わない?」
虎幸「___!」
豹羅「......」
豹那「父親におんぶされてさ、大きな背中に身を預けたり。
母親に甘えて、優しい手であやされたり。
親、っていうものに与えられる愛情は、当たり前のものだけど、きっとすごく暖かいの。
兄や姉、世話係じゃきっと与えられないものだ。
私は、この子の父親にはなれないし、血も繋がってないから本当なら母親にだってなれない。
この子を、騙すことにもなるんだけど....。
私はこの子を、捨てられた孤児にはしたくないの」
((抱き締めてくれる母親も、護ってくれる父親も、私達にはいない。
あの劣等感なんか、この子にはきっと似合わない。
父親はいないから、きっと少しは不自由な思いするだろうけど、片方だけでも親がいるのってきっとすごく重要だと思う))
豹羅「...女王蜂への、皮肉か?
それとも、俺への恨み節?」
((兄さんの表情は、言葉にはできないけど、何かがとぐろを巻いていた。
母親殺しへの後悔か、今の言葉への揶揄か。
きっと、どっちもだ。
私ではなく、自分自身に対しての))
豹那「皮肉でも恨みでもないわ。
結果的に女王蜂のおかげで得たものは大きいし、体への負荷も蔑ろに生んでくれたことには、今は感謝しているけれど。
兄さんがいなかったら、女王蜂に殺されていたわ」
((もう、この話はやめましょう。
そういい、月子の顔をのぞきこむ。
柔らかな髪と、ぷにぷにしたほっぺ。
小さな唇。
嗚呼_____))
豹那「...貴女は、望まれて、愛されて産まれてきたんだ。
劣等感も疎外感もいらない。
私の、可愛い娘。
一緒に、いっぱい寝て...いっぱい遊んで...いっぱいは無理だけど食べて...いっぱい笑って...いっぱい泣こうね...。
貴女には、私がいるから。
私の、たった一人の愛娘____」
((そういった瞬間の兄弟は、皆、晴れやかな笑顔を浮かべていて、思わずはにかんだ))
♪他の兄弟にもはじめまして