カエン「お前達の為でもあるんだ!

こんな屋敷を出る口実にもなる...。


いつか...。
能力者を忌む一般人なんか入ってこれないような場所を作る。
能力者だけの、場所を。

その準備をするのにこの屋敷は手狭だ。


...豹那達の記憶を消して...屋敷を出て、別荘に住もう。
そこで...豹那達を抑え込みながら...準備を進める。


だから、準備ができるまで...。
君達にも、手をあげるかもしれない。

恨んでいい。
君達が僕を恨む姿を見て、豹那の憎しみは膨れ上がる。


理解は難しいだろう。
だが聞き分けてくれ。


いつか、かならず...。

闇之の影響も能力のない人間からの迫害もない場所を作る。

それまで...。




僕は、自らの子に手をあげる」



((お父様の意志は、固かった。
どれだけ止めてもきっと効果はない。


すやすやと眠る豹那。
明日、起きたときは、今日までの幸せな記憶は封じ込められていて...。


凄く、辛い思いをするんだ...。

嗚呼...))



カエン「...すべては、君たちを能力者に産んでしまった僕と如月の責任だ...。
いや...破壊獣を持っていながら子を為した僕のせいか...」


如月「カエンさん...!
馬鹿なこと仰らないで!!」



((豹那を抱えて、お母様がお父様を抱き締める。
耐えきれなくなって、私と狐來もお父様に抱きついた))



カエン「...!!」


((お父様...お母様...。
私達は幸せです...。
こんなに優しくて...私達を心の底から愛してくださるお二方の子に産まれて...。

能力だって、これで妹達を護れるんだから授かり物です。


一度だって...貴女達の子であることを恨んだりしません!))



カエン「...!!

...嗚呼...そうか...」



((お父様の暖かい腕が、私達の背中にまわる。
その目が、お母様の腕の中の豹那を優しく見つめた))



カエン「...僕の...力の結晶である豹那に...幾ばくかの加護があらんことを...」


((豹那の額に口付けるお父様の横顔が月に照らされて、美しかった。


お父様は私や狐來の頬にも口付けをおとし、まだ入り口で佇む鷹人お兄さんを見た。


...お兄さん...?))



カエン「...君が今考えていることはわかるよ。
悩んでいることも。

悩んで、悩んで。
悩み抜いて決めろ...。

君は頭が良いんだから...」


鷹人「ッ...。

嗚呼...」



((爛々と輝く月に照らされる中。

私達は、すべてに鍵をかけた。



目覚めたときに待つのは...。

暴君の、お父様と。
女王蜂の、お母様。

冷酷な、養兄。




まだ見ぬ未来に向けた...。

第一歩...))




●●ごめんね...豹那...




●●豹那達の為だからって!