「あ...さ...。
あね...ま...。

姉様。
姉様っ」



((...レナ...?))


レナ「突然ボーッとして、どうしましたか?
料理に何か不備でも...」



((...ううん、何でもないの。




昔の事を思い出していたら、いつの間にか食事の手を止めてしまったらしい。




お父様とお母様を失って五年流れた。
レナもレラ兄さんも、こんな劣悪な環境で随分成長した。

勿論自分も。


レナはまだ十二歳だが、あの軍隊では欠かせないほどの戦闘力になった。
兄さんとのコンビネーションが何よりの強みだったけど、その兄さんが前に下半身不随になってしまったので戦線離脱。
レナが一人で頑張っている。
私は兄さんの世話や寝床の掃除に勤しんでいた))



レラ「...ひよこまめ?」

レナ「の、缶詰めに手を加えました。
賞味期限は切れていません、ご安心を」


レラ「いやそれは疑ってない」


((両親を目の前で失った悲しみが癒えることはない。
傷が塞がる日は来ない。
寧ろ拡がる一方だ。

傷が拡がるほど、レナは強くなる。


それこそ、悪魔のようだ))



レラ「あ、そうだ。
今日僕と月子で君のナイフと銃磨いておいたよ。
ホルスターもほつれてるところ補強した」


レナ「んっ、すみません。
ありがとうございます」


レラ「どういたしまして。
お礼にこのおかずもらうよ」


レナ「待ってください何で全部持っていくんですか」


((___それでも今くらいは。
この、小さな幸せに浸らせてください。


夜風は冷たいし、雨漏りもひどい。
ご飯なんてやっと食べられている。
怪我しても万全な処置なんかできない。



劣悪極まれど。
私達は幸せを感じている。











私達を見下ろす下弦の月が、再び私達から家族を奪うまで、あと_____))









__END__




●▼__姉様