『...!!!
ッチ...!

そこな妖!
お主、今すぐ妾の御簾の中から入れ物を持ってこい!
...そうじゃ、以前仕入れた中で一番良いものじゃ。

そっちのお主。
貴様はこの妖を縛り上げて大江の山にでも捨ててくるのじゃ。
鬼どもが喜んでむさぼり食うであろう。

はようせい。
妾の虫がこれ以上居所を悪くしても良いのか。


これ、妾よ。
そうまで泣くでないわ。

形あるものはいつか壊れる。
それがものの運命じゃ。
その入れ物のお陰でお主に傷が付かなかっただけ良しとせぬか。

...中身は無事じゃな。
零れてはおるが、大半は無事じゃ。


っむ、それじゃ。
ご苦労、下がるが良い。


ほれ、童。
入れ物ならば新しいのをやる。
今度は安易には壊せぬよう、妾の呪符を貼っておいた。

安心せい、ヒトの目には見えぬ故外観は損なわん。


さぁ、分かったら立つのじゃ。
庵に戻るぞ』


((玉藻前様の美しい手が、私の手に重ねられた。
冷たいその手は、安心させるようにずっと手を握っていてくれた))





▲▲はい...。でも、香が...宝物だったのに...壊されて...グスッ(壊れた香入れを抱きしめ)