(…まただ、また夜中に目が覚めてしまった。)
(相変わらず寝付くことはできなかったが、この前の事を思い出すと校舎の中に入る気にはなれない…。)
(私は中庭を散歩することにした。)
(寄宿舎の外へ出ると、校舎へ向かって道を歩いていく人影が見えた。…真宮寺君だ。)
(慌てて近くの植木に身を隠しつつ、その姿を眺めていると、彼のポケットから何かがキラリと光って落ちるのが見えた。)
(彼が校舎に入るのを確認して、私は一目散にそれを拾いに行った。)
(片手に収まる程の大きさのそれは、銀色の細長い身体に月の光を写して輝いている。…これは…口紅…?)
(何故彼がこれを持っているのかはわからなかったが、夜中の彼に話しかける勇気は私には無かった。)
(…明日渡しに行くことにしよう。)
夜中に散歩する