(食堂で待っていると、厨房からお皿を手にしたお姉さんがやって来た。)
(お姉さんは上品に私の隣の席へ腰を下ろすと、お皿を私の目の前に置いた。)
(お皿の上にあるのは、切り分けられた林檎と…これまた真っ赤で、宝石のような粒の詰まった果物。)
(これ…柘榴?)
そうヨ。
本来の使い方とは違うけれど、有効活用させて貰ったわ。
林檎を口にすれば、きっと是清が真実の知識を得るための鍵を教えてくれるはずヨ。
真実がわかりさえすれば、ここを抜け出して、外へ出られるわ。
でももし、貴女が柘榴を口にしたら…永遠の命を得て、私とずっとここにいることができるわヨ。
…選んで頂戴。どちらが貴女の幸せなの?
(…決められない、決めたくない…。)
(だが…お姉さんの揺れる瞳が、もう時間が無いことを物語っている。)
(…私は…)
∀林檎を口にした。∀柘榴を口にした。∀何も口にしなかった。