(次の授業に遅れる!と廊下をダッシュしていると、突然柔らかい壁のようなものにぶつかり尻もちを着く。え、なに、なにもないのに何かにぶつかった……見えない壁……?)
……随分と元気の良い事だな、仔犬。
廊下を全速力で走るのは危険だ。突然目の前に見えない壁が現れるかもしれない。そうだろう?
(尻もちをついたままぽかんとしている私の顔を見て、先生はクツクツと笑った。手を掴んでそっと立たせてくれた。)
怪我はないな。
全く…おてんば娘が過ぎるぞ。授業に遅れそうなら、もう少し余裕を持って行動しろ。いいな?
(はい、と返事をした貴方の手に持つ教科書を見て)
…仔犬、次は魔法史か?
ハハ。それは確かに走りたくもなるな。だが俺が呼び止めてしまってはもう走っても間に合わんだろう。
……鐘が鳴るまであと二分か……よし、いつも素直な仔犬に"飴"をやろう。
手を。
(真っ赤なグローブをするりと外して、私に手を差し出した。恐る恐るクルーウェル先生の手を握ると、ぐっと引き寄せられた。)
Good Girl. ……少し目を閉じていろ。慣れていないと酔うぞ。
(そう言って手に持っている指揮棒を軽く振る。慌てて目を閉じると、ガクンと一瞬身体が浮いた。怖くてクルーウェル先生の手をぎゅうと強く握る。時間にして5秒ほど。いいぞと言われ恐る恐る目を開けると、目の前に教室の扉が。)
着いたぞ。
トレイン先生が来るまであと一分。
…子犬、目を丸くしていないで早く教室に入れ。ははは。
(くしゃりと軽く私の頭を撫でて、クルーウェル先生は去って行った…)