(校舎裏に呼び出され、ずっと君が好きだったんだ!と熱烈な告白を受け、えっ…私、モテ期…?とか馬鹿なことをぼんやりと考えていたら、手をギュッ!と握られた。君は可憐で!美しくて!なんて、聞いてて痒くなるような事を言われ、ちょっと軽く引いていると、突然ヒッ!!!!と悲鳴を上げて固まった。
腕を引かれて、その彼が私の前に立ち塞がる。え、なに?と彼の背から前を覗くと、いつものにやけ顔のフロイド先輩が立っていた。ただ、目が笑っていない。)
……すげー熱烈な告白じゃん。
なに?可憐で美しく、まるで一輪の薔薇のよう!だっけ?アハっ!すげーじゃん小エビちゃん、小エビちゃんカワイーもんねえ。まあ一輪の薔薇?って感じではねえけどぉ。
(一歩一歩近付いてくるフロイドから庇うように私の前に立つ彼を少しだけ尊敬する。すごいよ名前も知らない君。フロイド先輩の殺気に負けずに頑張ってる!ガタガタ震えてはいるけど!)
小エビちゃん。
こっちおいでぇ。
(いつもの優しい声で呼ばれる。そろそろと彼の後ろから出てフロイド先輩に近付く。
行かないでくれ!と彼の熱い視線を感じたけど、ここで行かなかったら余計に危ない気しかしない。)
(いい子だね~、と頭を撫でてくるフロイド先輩の手を取る。
さすがに告白して来ただけで彼が絞められてしまっては可哀想だと、フロイド先輩の手を引っ張って、「戻りましょう先輩」と言った。)
…チッ。
……まーいーや。 行こっかぁ小エビちゃん。
(ふにゃ、と笑ったフロイド先輩から殺気が消えて、ほっとする。ある程度その場から離れた所で、フロイド先輩の手を離した。)
…大丈夫だった?
別に何もされてない、って?うそぉ。手ぇ握られてドンドン壁に追い詰められてたじゃん。
あれそのまま壁に追い込んで、たぶんチューとかされてたと思うよ。絶対そう。なんかそーゆー顔してたもん。ムッツリの顔してた。たぶんチンコ立ってたよアイツ。
(めちゃくちゃ下品な事を言い出すものだから思わず吹き出してしまう。)
あは。…あんまし一人で歩いちゃだめだよぉ。
せめてアザラシちゃんと一緒に行動しな。まあちょい頼りねえけどぉ、いないよりはマシだし。
…ん?あー、アイツにはオレはもー別に手出ししねーから大丈夫だよぉ。…オレは。
なに、そんなに心配してさあ、……まさか満更でも無かったとか言わねぇよねぇ。そんな事言われたらオレも絞めに行っちゃうかも~~~。あはっ。
(そう言って、離した手をもう一度ぎゅっと繋いで来た。)
(……そしてその時、私はすっかり忘れていたのだ。私の番犬は一匹ではないと。
その日。校舎裏から、血で汚れた手袋を外しながらにこやかに歩いて来る双子の片割れが目撃されたという……。)