(暫くの間、ジェイド先輩に会わないようになるべく避けていた。ジェイド先輩を避ける私に、不思議そうにフロイド先輩が「どしたの?ケンカでもした?」と聞いてきたけれど、そういう訳では無いんですが…と煮え切れぬ返事をする事しか出来なかった。
避けている事に気づいたらしいジェイド先輩が何度か接触を図ってきたけれど、なんとか逃げ続ける私。そしてそれを追うジェイド先輩…の図を見て、フロイド先輩のおもしろセンサーに触れたらしく、逃げるのを手伝ってくれたりもした。
なんでも、「ジェイドが焦って必死に追ってる姿がウケる」……とかなんとか。)
(そんなこんなで一週間。今日は珍しく一度もジェイド先輩に会わずにいれた。フゥ…とため息をつきながらオンボロ寮の玄関の扉を開ける。
ーーすると突然、後ろからがしりと腕を掴まれて、扉の中に押し込まれた。
玄関にべしょ、と転んでしまう。なに、誰、まさか、と転んだまま頭だけ恐る恐る振り返ると、ジェイド先輩が立っていた。
扉をバタン、と閉めて、ガチャリと鍵をかけられる。)
これはこれは、失礼しました。お怪我は?
(にこりと微笑んで、私の手を掴み立たせてくれる。)
…ところで、〇〇さん。
ウツボの狩りの仕方というのをご存知ですか?
ウツボは待ち伏せをして獲物を狩るんです。
…最初からこうしていれば良かったですね。
ああでも、追いかけっこも楽しかったんですよ。
色々な方が僕から逃げる貴方の手助けをするものですから、毎日飽きずに一週間も続けてしまいました。
本当に貴方はお友達が多いんですねぇ。妬いてしまいます。
……本当に。胸が張り裂けそうでしたよ。
もう一週間も、〇〇さんに名前を呼んで貰っていない。
挨拶すら交わしていない。
(がしりと腕を掴まれる。いつもより低い声に怒っているのかと思ったが、悲しげに目を伏せていた。)
…………もう僕とは話したくありませんか?
もう嫌いですか。僕のこと…。
突然…突然じゃないですか。だって、先週までは普通だったのに。分からないんです。どうしてですか?貴方が嫌がることをしてしまったのなら、謝ります…。
ですから、どうか、逃げないで。
……もう僕を見て、背を向けて、離れていく〇〇さんを見たくありません。
仲直り出来ませんか?お願いします…。
(掴まれた腕が、少しだけ痛い。)
すみません、えっと……、嫌いになった訳じゃなくて……な、なんだかドキドキして顔が見れなくて…