(その日はいつも通り、授業を終えて、二階の教室から一階へ移動しようと階段を下りている最中。下からジェイド先輩がやって来たのが見えて、手を振ると同時に、足を踏み外してしまった。
階段から落ちる瞬間がスローモーションに見えて、ジェイド先輩が手を伸ばして受け止めようとしてくれた事が分かった。
そしてジェイド先輩にぶつかり、それと同時になにかが唇にガチッ、と当たった。)
―――ッ……!!
(顔を上げると、ジェイド先輩が真っ赤になって口元を抑えていた。それを見て、唇にぶつかったものの正体を察する。)
(はっ…!)
す、すみません、…しっかりと受け止めたつもりですが、お怪我は?どこか手足などに痛みはありませんか?
……はあ、良かった。
駄目ですよ、気を付けなくては…たまたま僕が下にいたから良かったものの、貴方の身体は柔らかいんですから、ぶつけたりしたらすぐに痣になってしまいますよ。
………あ……、…すみません、その。血が……。
(ジェイド先輩が指先で私の唇に触れた。)
その……、…唇同士がぶつかってしまったようで……。勢いが良すぎて、僕の歯で〇〇さんの唇に、傷を…。
すみません、本当に、あの、…事故とはいえ、〇〇さんにキスをしてしまいました。
(ハンカチを取り出し、貴方の唇の血を拭う。)
……。
…はは。……せっかく〇〇さんとキスをするなら、もっといい雰囲気の中したかったものですね。
唇、少しハンカチで抑えていた方がいいですよ。お貸ししますから。
すみませんでした。…次また貴方の唇に触れる機会があれば、その時はもっと優しくしますので。ふふ。