……ぐすっ……あ、アンタねぇ…………こんな美少女が泣いてる前でパクパクパクパク……大事な神経焼き切れてんじゃないの……?ほんっとあり得ない……ぐすっ…………

食べないのかって……た、食べるわよ!私だって頑張ったからお腹減ってるんだもん!高級イタリアンがなければ、安物のイタリアンを食べればいいじゃない…………うっさい!なに笑ってんのよ!張っ倒されたいの!?



ごくっ……そ、そもそもこのエスカルゴって、ほんとに私の知ってるあのエスカルゴなのかしら…………まさかとは思うけど、その辺のカタツムリを適当に入れてるんじゃないでしょうね…………

うぅ……むかつくぅ…………せっかくの記念日なのに、なんでこんな惨めな思いをしなくちゃいけないのよぉ…………!このばかでゅうさぁ……あとで絶対に給料半分にしてやるぅぅぅ…………え、えいっ!





パクッ

……え、美味し。





いや、これ……なかなか結構本格的な……こ、こっちのチキンは……ぱくっ…………あ、これも結構……ま、まさかこっちのピザも……もぐっ…………あ、これは普通に安っぽ……でも、味自体はそんなに悪くないっていうか…………

……な、なによ。そのニヤニヤした顔…………言っとくけどね!?これより美味しいイタリアンなんて、それこそ星の数ほどあるんだから!今度アンタのことも連れてってや……あ、こらっ!そのチキン、私まだひとつしか食べてないんだけど!?寄越しなさ~いっ!!







はぁ、お腹いっぱい……♪

なるほどねぇ。これがいわゆる企業努力ってやつなのかしら。そりゃイタリアで安くて美味しいイタリアンが食べられるのは普通だけど、日本でこれぐらい安くて美味し……そ、そこそこ美味しいイタリアンが食べられるなんて…………

……美味しいもの、たくさん知ってるつもりだったんだけどな…………まだまだ私の知らないグルメの世界って、いっぱいあるもんなんだ……ふーん…………



ま、まぁ……その…………不満は不満だけど、なけなしの頭を振り絞った意外性を評価してあげないこともないっていうか…………今回は!特別に今回だけは、コレで我慢してあげるっ。

その代わり、次のランクアップのときはちゃんとした……ちゃんとしたというか、えっと…………あ、アンタのオススメの美味しいお店を紹介しなさい!どうせ他にもあんでしょ!?出し惜しみなんてしたら死刑なんだから!ふんっ!



……は?たまには知らないものに手を出すのも悪くないだろって…………ちっ、嫌味ったらしいわね。いったい何が言いたいのよ。

そりゃこのお店はそこそこだったけど……言っとくけどね、事務所でアイツらと喧嘩したことなら私が絶対に正しいから。

だって、そうでしょ?皆で仲良くなんて……そんなの、ムリにきまってるじゃない。トップを目指す以上、いつかは蹴落とし合わなくちゃいけないんだもの。
それともアンタ、いつか必ず来るその日まで私たちに仲良しごっこをしろって言うわけ?はんっ。意外と良い性格してるわね。

あいにくだけど、私はいつか壊れるもんをセコセコ作るほど暇じゃないの。それに……それに…………



……それに私なんて、もうとっくに嫌われてるわよ。アイツらに憎まれ口しかきいたことないし、お誘いも一回だって受けたことないし。

ま、まぁ別にいいんだけど!このスーパーアイドルの伊織ちゃんと、ああいう石ころみたいにありふれたアイドルたちとじゃ格が違いすぎるしねー!

どうせいつかはランクアップを巡って蹴落とし合うんだし、だったら先に嫌われといた方がスッキリするというか……うんうん、さすがは才女の伊織ちゃん。あんなヤツらとは違って、ずっと効率的で現実的な…………



【伊織、それは違うぞ。】
Eランクアップ08