ずずっ……な、なによぉ…………そんなじーっと……見つめてきて……ぐすっ…………見せもんじゃ……ないんだけど……?
この伊織ちゃんの可愛い顔を……こんなにぐしゃぐしゃにするなんて…………ほんといい度胸して…………ぐしゃぐしゃになってても可愛い?……ば、ばかっ。
はぁ、やっと落ち着いてきたわ…………これ、絶対瞼腫れてるでしょ。うぅ……さっきから目がしばしばするー!気持ちわるーいっ!
……このあと事務所に戻ったら、きっと皆からはランクアップが嬉しくて泣いたって思われそうね。まぁ、その方が好都合だけど…………
え、えっと……その…………さ、さっきの話なんだけど……本当…………よね?私のこと大好きで……付き合ってほしいって…………嘘じゃない……のよね…………?
……わ、ちょっ!ばかっ!いいからっ!もう一回言い直さなくても信じるから!!
そっかぁ……んふっ…………んふふふふふっ♪
そっかあ!やーっぱりアンタも、私の魅力にテロンテロンになってたんだー!?ねぇねぇ、いつ?いつから私のこと大好きになったの!?勿体ぶらずに教えなさいよー!!
いいじゃないの。私ばっかり赤裸々に語っちゃったんだから、アンタも教えてくれないとフェアじゃないわ。さぁ、さっさとキリキリ白状しなさ~~~いっ!!
……なーんてねっ。別にこの場で言わなくたっていいわよ。そんなに急ぐ話でもないし、これから時間はたーっぷりあるんだもの。
これからアンタは……私の……か、彼氏になる……わけだし…………んふっ……んふふふふっ…………♪

な、なによー!ニヤけたって仕方ないでしょ?Aランクの座も、人生初彼氏も一緒にゲットできたんだもの。これでテンション上がらない女の子なんているわけないじゃない!!
……さっきは色々悩んでたくせに?うっ……そ、そりゃそうよ。私とアンタってアイドルとプロデューサーなわけだし、歳もちょっと離れてるし…………
でも、さっきまではさっきまで!今は今よっ!私は常に今を生きてるの。さっきまでの私の言ったことよりも、今私がどう感じてるかの方が100倍大切なわけ。アンタ、私との付き合いも長いんだからそれぐらいわかるでしょ?
だって、別に彼氏ができたって、ファンの皆のことを大好きだって気持ちに変わりないもの。これからもファンを全力で愛していけば、まったく少しも何の問題もないはずだわ!うんうん、さっすがは伊織ちゃん。あったまいー!
そ・れ・にぃ……身分違いの禁断の恋って、なーんかロマンチックよねー♪
誰もが憧れるトップアイドルで、スーパーウルトラミラクル美少女の伊織ちゃんとぉ……ショボショボでパッとしない下僕兼騎士兼プロデューサーのアンタ…………やーん!不釣り合いすぎて困っちゃーーーうっ♪
……でも、仕方ないわよね。だって……好きになっちゃったんだもん。悔しいけど、この気持ちだけはごまかせないし…………
それじゃ、そろそろ事務所に戻りましょうか。皆のこと、あんまり待たせるのも悪いしね。
あ、それと……私たちの関係のことは、まだ皆にも秘密にしておきましょう?今日はあくまで、私のAランク昇進パーティーなの。他のことは……まぁ時期をみてって感じね。
……これからも私は全力でアイドルを続けて、全力で恋をして…………全力で走り続けるつもり。
だから、プロデューサー。アンタも負けないように、私の横を走り続けなさいよ?
全力でプロデュースをして……全力で、この伊織ちゃんを愛し続けなさ~~~いっ♪
【伊織は頬を赤く染めながら俺を指差すと、いつものように自信たっぷりにそう命令した。】
【プロデューサーとアイドルが恋仲になるんだ。きっと障害も多いだろうし、もしかしたら俺の選択は正しくなかったのかもしれない。】
【それでも、俺の選択は間違っていなかったはずだ。だって、目の前の女の子がこんなにも笑っているんだから。】
【これからも俺と伊織は、どこまでも走り続ける。いつかプロデューサーとアイドルの関係が終わったとしても……ずっと、ずっとその先まで!!】
ハッピーコミュニケーションはぁ、着いた着いたっと。プロデューサー、早くドアを開けなさいよ。もう私、歩き疲れてくたくた~。
【……なぁ、俺たち、もう恋人同士なんだよな?】