あの、さ。この間の誕生日にお願いしたじゃない？私がＡランクアイドルになったら、ひとつだけワガママを聞いてほしいって。覚えてる？

ま、そりゃ覚えてるわよね。これで忘れてたとか言ったら、Ａランクアイドル直々に記憶を呼び起こしてやるところだったわ。古いテレビみたいにパシーンって！にひひっ♪





……うん。それでね？そのワガママっていうのは…………ちょっとお芝居に付き合ってほしいの。





実はさっき最後に歌った『全力アイドル』、すっごく良い曲なんだけど……さすがに主人公の女の子が可哀想すぎると思わない？

せっかく両想いだったのに、自分の夢のためにその想いに蓋をするなんて……アイドルってそういうものとはいえ、やっぱりちょっと同情しちゃうわけよ。ひとりの女の子としてね。





そ・こ・でっ！このスーパーアイドル伊織ちゃんが、こっそり主人公の女の子を、女の子として幸せにしてあげようってわけ！

歌の中で女の子は、一人のアイドルとしての幸せを掴んだわ。だから、今日は一人の女の子としての幸せも掴んでもらおっかなーって。どうどう？なかなか良いアイディアでしょー！

ま、今日のフェスでも、最後はこの曲のおかげで勝ち切れたわけだし、これも私流の恩返しというか……まぁそんな感じ……というか…………えっと…………





……とにかく善は急げよ。私が女の子の役をやるから、アンタは先輩の役をやりなさい。

ほんとはアンタなんかじゃ役者が不足してるけど……今日は特別に我慢してやるから。





それじゃ、始めるわね？

トップアイドル・水瀬伊織の、Ａランクとしての記念すべき初パフォーマンス。



一番近くで、ちゃんと見ててちょうだい。



【あぁ、特等席で楽しませてもらうよ。】