【貴音殿、先ずはお誕生日お慶び申し上げる
天体観測が趣味とのことなので、こういうものを用意させていただいた。はい、この写真をあげよう。
この写真の名前は『ペイル・ブルー・ドット』人類史上最も遠くから地球を撮影した写真、それもボイジャーから送られてきたデータを新しく現像したものだよ
宇宙のロマンというのは、いやはや素晴らしいものだな
今度一緒に天文台に行こうぜ!】
貴音「まぁ……プロデューサー、結構なものをありがとうございます。お誘いですが、近いうち是非に。」ニコッ
へぇ、これが宇宙ってやつなのね。ふーん……え、このゴミみたいに小さいのが地球なの!?本当に!?
貴音「これ、伊織。表現に風情がありませんよ?」
だってこれ……全人類総伊織ちゃんファン計画を達成した後は、全宇宙総伊織ちゃんファン計画を想定してたんだけど…………むむむ、これは一筋縄ではいかなそうね。
貴音「……伊織ならばきっと成し遂げられますよ。ひとまず地球のあとは月、などいかがでしょう。」
月ねぇ……ま、確かに月のうさちゃん達をメロメロにしちゃうのも悪くないかも。美味しいお餅もご馳走になりたいし!にひひっ♪
貴音「うふふふふっ♪そうなれば真、楽しきことですね♪」
さ、今後の野望を語ったところで……次のメッセージよ!
【貴音様、お誕生日おめでとうございます
プレゼントですが、映画のヒロインオーディションの権利を差し上げます。何とかお仕事を取ってまいりました…。もちろん、伊織の分のオーディション枠もあります。
内容は『人に化けて村に行ったときにとある人間の男性に一目ぼれをした、美しい女の姿をした蜘蛛の妖』と『見惚れた女が妖と知って尚愛を貫いた男』の悲恋の物語です。
もちろん、無理にとは言いませんので。オリジナル作品なので原作はありませんが、一応オーディション用の台本はいただいていますので、合わせてお渡ししておきますね。】
オーディション、かぁ……つまり私とコイツ、どちらかしかヒロインの座は射止められないってわけね。
貴音「おや、今さらそのような当たり前のことを口にするとは……まさか伊織、私と役を争うことに臆しているのですか?」
んーん、ただ悪いなーって思ってね。せっかくの誕生日プレゼントがムダになっちゃうんだもの。申し訳ないわぁ…………
貴音「……………………」
……………………
貴音「……ふふっ♪さすがは伊織。これは私も気を引き締めていかねばなりません。」
ふふーんだっ。最後に笑うのはこの私って決まってんのよ♪……は?なによ。プロデューサー。私たちが仲悪いのかって…………そんなことないわよ。失礼しちゃうわねー。
貴音「しかし、人に恋をした妖の役ですか。恋をして、それを見事に成就させた経験の差をどこまで埋められるか……ふむ…………」
ま、お手並み拝見……って、改めて言われるとなんだか照れくさいわね…………次々!次よっ!
【貴音に誕生日プレゼントだよ
→伊織が顔そのままで体が筋骨隆々の巨漢に見えるメガネ】
あら、ここにきて随分と普通のプレゼントね。ちょっとアンタ、ちゃんと度は合ってんの?コイツ、かーなーりー視力悪いのよ?
貴音「伊織、心配には及びませんよ。この自信に溢れた表情……私たちのことであれば何でも知っていると、何よりも雄弁に語っているではありませんか。では、早速……」
スチャッ
貴音「ひぅぅっ!!?」!!?
ポイッ
貴音「……い、今のは悪い夢だったことにいたしましょう。さ、次の文を…………」
え、なになに。いきなり眼鏡を投げ捨てたのも気になるけど、今のリアクションはいったい……ね、ねぇ!なんで目を合わせないの!?ちょっと!!
【まずはお誕生日おめでとう。今後のご健勝をお祈り申し上げる。
んで、プレゼント代わりと言ってはなんだけど、珍しい曲のカバーの依頼があったから持ってきたよ。曲名は『Baba Yetu』。とあるゲームのオープニングなんだけど、ゲーム楽曲で初めてグラミー賞を受賞した曲なんだ。
外国語で、なおかつ英語ではなくスワヒリ語の歌だから難しいかもしれないが…。
貴音単独のカバーと貴音、伊織、千早の合唱を依頼されているんだ。先方も無理にとは言わないとのことなので、無理だと思ったら断ってくれてもかまわない。
一応、歌詞カードと原曲も合わせて渡しておくよ。】
千早「水瀬さん。四条さん。ちょっといいかしら。プロデューサーから来るように呼ばれてきたんだけど……」
バキィッ
千早「へ?今何か踏んで……え、これ……眼鏡…………」
ねぇ、こっち見ろって言ってんでしょ!?ほら、目ぇ見てっ!見なさいっての!!
貴音「ひぃっ……筋肉の物の怪…………!」ガクブル
なっ……だ、誰が物の怪よ!それに筋肉って……さてはさっきの眼鏡、なにか細工がしてあったんじゃないでしょうね!?
千早「あ、あのぅ……その眼鏡ってひょっとして、コレ…………?」
あー!千早がプレゼントの眼鏡を壊したー!
千早「えっ!?これ、そんな大切な…………ご、ごめんなさい!弁償で済む話ではないとわかってますけど、それでも弁償させてもらいますっ!ほんっっっとにごめんなさいっ!!」
貴音「いえ、よいのです……プロデューサーには申し訳ありませんが、どうやらあの眼鏡は呪われていたようで…………まさか伊織があそこまで筋骨隆々に……うぅ…………」
はぁ!?ちょ……今なんて!?この伊織ちゃんがそんな暑苦しい姿に見えるって……ちょっと、プロデューサー!話を聞かせなさいよ!ねぇっ!!
千早「水瀬さん!落ち着いてっ!?事情はまったくわからないけど、とにかく落ち着いてぇ!!」
はぁ……はぁ…………で……?アンタ、いったい何をしに来たのよ。
千早「はぁ……はぁ…………わ、私はただ……水瀬さんと四条さんと歌の仕事ができるって聞いたから…………」
貴音「……聴いたところ、これは賛美歌のようですね。以前すかいつりーで聖歌隊の皆と合唱したことはありますが…………伊織。千早。いかがでしょう。」
ふんっ。そんなもん受けるに決まってるでしょ?この私の天使の歌声で、聴いている人たちを文字どおり昇天させてやるわっ。
千早「私もこのお話をいただいてから楽しみで楽しみで……スワヒリ語の歌には初めて触れますが、二人と一緒に歌詞と向き合いながら挑戦してみたいかと。」
貴音「えぇ、貴女たちならそう答えてくれると信じておりました。プロデューサー、真によき話をありがとうございます。私たちも三位一体となり、必ずや期待に応える歌唱を披露してみせましょう!」
千早、機嫌よさそうに帰っていったわね。大好きな歌の仕事ってなると、やっぱりモチベーションが違うみたい。
貴音「私も千早と同じく心踊る思いです。貴女もそうでしょう?いお……こほん。伊織。」
ねぇ、今変な間があったけど……あ、そうだ!さっきの眼鏡の話っ。きっちり説明しなさい!
貴音「さて、何のことやら……
それでは次の文に参りましょう。」
むぅ……後できっちり追及してやるんだから。