はぁ……お待たせ。今日は一日お疲れ様。ほら、ネクタイぐらい弛めていいわよ?もうパーティーの時間は終わって、アンタは元のショボショボプロデューサーに戻ったんだから。
それにしても……にひひっ♪サプライズ、大・成・功ぉっ!アンタも見てたでしょ?あの圧巻のパフォーマンス!皆揃ってステージ上の私に釘付けになっちゃって…………見てっ!この名刺の数々!もう神経衰弱とかで遊べちゃうぐらいの枚数を渡されたんだから♪
ま、結局伊織ちゃんの魅力の前に、世間では一流なんて呼ばれてる大人達が、揃いも揃ってテロンテロンになっちゃったってことよねー?ふふっ……どいつもこいつも気づくの遅すぎなのよっ!
……お父様にはちょっぴり怒られたけど。大富社長との一件、いくらお芝居でも品が無さすぎるって。ったく、いい気なもんよねー?可愛い娘がセクハラされてるってのに、それに気づかずに偉そうに奥の方に座ってたんだもの。あー、やだやだ。これだからお偉いさんってヤツはダメなのよねー。
でもね、お父様、最後のパフォーマンスのことを『水瀬の者として、あれぐらいは出来て当然だ。せいぜい諦めがつくところまでやってみろ。』って…………
初めてなのよ。『もう十分だろ。そろそろアイドルなんて辞めなさい。』以外のことを言われたの。これって私のこと、一応認めてくれたってこと……よね?
ふ、ふんっ!だとしたら紛らわしいのよっ!なんで『さすがは伊織っ!俺の自慢の娘だな!』ぐらい言えないのかしら。意地っ張りな男なんて、どこにも需要ないっつーの!ほんと素直じゃないんだから…………
あ、それと……大富社長から謝られたわ。アンタにもよろしく言っといてくれって…………ま、ステージ上の私のあまりにキラキラした姿を見て、汚れた心も浄化されたんじゃない?あのまま調子こいてたら、ドブ川に頭突っ込ませて、濁ったお目目を洗ってさしあげよっかなーって思ってたんだけどー♪
……あと、貴音様にも是非よろしくって言われたのよね。いや、貴音様って……あ、アイツ、961プロ時代にいったい何を…………いや、深く考えるのはやめておきましょう。うん。
はぁ……そ・れ・に・し・て・もぉ!にひひっ♪アンタ、超カッコつけてたわよねっ!『俺は伊織の騎士だから』って……あっはははは♪あのキリッとした顔っ!本当に……ほんと…………ほん……と…………
……私ね?大富社長に触られそうになった時、ぶっちゃけ足がすくんじゃって……強がってはいたけど、すっごく、すっごく怖かったの。
普段だったらあんなヤツ、けちょんけちょんにしちゃうのに……体はガクガク震えるだけで言うことを聞いてくれなくて、情けないけど泣きそうになっちゃった。
も、もちろんプロデューサーとして、アンタはあの場で動かないのが正解だったのよ!?大富社長が反省してくれたから良かったけど、これがきっかけで事務所に圧力をかけられたっておかしくない状況だったんだから。
ビックリしたわよ。気がついたらアンタが目の前に立ってて、伊織に謝ってくださいって怒鳴るんだもの。ほーんと感情的すぎでしょ。三流プロデューサーさん?
……あの時のアンタ、ほんとカッコよかった。
怯えて何もできない私の前に、本物の騎士様が駆け付けてくれたみたいで…………う、嬉しかったのよ!文句ある!?こういうのは理屈じゃないの!時には感情が優先されることなんて、世の中には山ほどあるわよっ!!わかるっ!?
さ、さっきと言ってることが違うって……う、うるさいうるさいうるさ~~~いっ!!いちいち細かいことを気にする男は嫌われるわよ!?私の言ったことには、黙ってイエスかはいで答えてればいいのっ!!
ったく……そ、それにしてもアンタも大変よねー?プロデューサーとしての立場と、私の騎士としての立場の板挟みにあうなんて!他人事ながら同情しちゃうわ。そんなの絶対に面倒くさいじゃない。
……ねぇ、アンタはさ。そんな面倒くさい立場に置かれてるのに、なんで私の側から離れないでいてくれるの?
これもお仕事だから?それとも、大人として私のお守りをしてる感覚なわけ?それとも…………
【そんなの、俺が伊織と一緒にいたいからに決まってるだろ?】