……そうよ。アンタよ。アンタしかいないでしょ。
そりゃ事務所の皆や、いおや、シャル……うさちゃんも大切な存在よ?私がAランク、もっと上まで上がったら、絶対に喜んでくれるはずだもの。
でも、皆は仲間だし家族じゃない。私のことを水瀬伊織っていう一人の女の子として見てくれて、そのうえで応援してくれてるというか…………
わ、私の言ってるのはもっとこう……アイドルとしての水瀬伊織の側にいてくれる人っていうか…………うぅ……わ、わかるでしょ!?っていうか、わかりなさいよっ!
いいこと!?確かに私は天性の可愛さと有り余る知性と、たくさんの経験で身につけた根性でここまで来たわ。だからこそ、もうトップアイドルも夢じゃない。そう言っても過言じゃないぐらい、手を伸ばせば届く位置まできてるわけ。
それは私の頑張りは言うまでもないけど……周りの支えもあったからこそなの。さっきも言った仲間や家族、ファンの皆や細々と働いてくれる現場スタッフたち…………本当に感謝してるわ。ねぇ、アンタもそう思うでしょ?
で、でもっ!その中に大切な人が一人抜けてて……それがアンタなの!スーパーアイドル伊織ちゃんのMVPはアンタ!アンタなのっ!
仕事が上手くいかなくて落ち込んでた時も、ムカつく現場のディレクターと揉めた時も、それで私がふてくされてアイドルを辞めようとした時も……アンタがいたから頑張れたのっ!わかる!?
それなのに、ちょっと自信無さそうに『……俺?』じゃないわよっ!そこはもっと自信持って、俺しかいないぐらいのこと言いなさいよっ!頼りないわねっ!!
……これからも、私の側にはアンタがいるって、信じてるから。私が悔しい時や悲しい時も一緒に悔しがって悲しんで……私が嬉しい時は一緒に笑ってちょうだい。それが私にとってたった一人の騎士としての、たったひとつの仕事よ。
うぅ……な、なんか勢い任せで色々言っちゃった…………私ってば、なんでここまで…………
そ、それじゃ!そろそろ私、また皆に媚びを売ってくるから……アンタは音楽業界の関係者にでも顔を売っておくこと!いいわね!?
【お、おう……ん?アナタは…………】