い、いや。そりゃ事務所の皆は喜んでくれるだろうけど……皆すっごくお人好しだもん。負けず嫌いなヤツもいるけど、きっと私が一足先にトップアイドルになったとしても、心から祝福してくれるはずだわ。
……ねぇ、まだ私がEランクにも上がってなかった頃のこと、覚えてる?
ほら、私って……ほんのちょっぴり意地っ張りなところがあるでしょ?それは自分でも割と自覚してて…………だから私、思ってたのよ。そんな私のことなんか、どうせ事務所の皆も嫌いに決まってる。周りなんて私の邪魔をするライバルなんだから、別に嫌われたって構わない……ってね。
それを……何の機会だったかしら。アンタに言ったら……アンタってば、珍しく私に反抗してきて。もう私も初のランクアップフェスを控えて気が立ってたから、結構な喧嘩になっちゃって…………ふふっ、なーんか懐かしいわよね。
……あの時にアンタの言うことを聞かないで、自分一人で芸能界を生き抜こうとしてたら…………きっと私、とっくの昔に引退してたと思う。
事務所の皆と打ち解けて、嬉しい時も悲しい時も、側にいてくれる仲間ができたから……きっと今日までやってこれたのかなって。
だ、だから、何を言いたいかっていうと……じ、事務所の皆は仲間なんだから当然なのっ!さっき私が言いたかったのは……その…………あ、アンタよ!アンタっ!!
アンタ、私の騎士なんでしょ!?だったら私が嬉しい時は一緒に喜んで、私が悔しい時は一緒に地団駄踏んで、私が泣いちゃった時は代わりにドバドバ泣きなさいよっ!えぇっ!?
ったく……そんなことだから、いつまで経っても騎士と下僕を兼務してんのよ。ほんと察しが悪いんだから…………
じゃ、そろそろ私、また皆に媚びを売ってくるわ。アンタは音楽業界の関係者にでも顔を売っておきなさいよね。
【お、おう……ん?アナタは…………】