そういうトレーニングは、このお仕事をさせていただいてからですね。学生の頃はせいぜい友達とカラオケに行くぐらいで……
そのときだって、本当に親しい友達の前以外では緊張して全然歌えなかったんですよ?そんな私がテレビの前で歌ったりするなんて、今さらですけど不思議な気分です。
はぁ、それにしても……最初はキツかったわぁ。皆の前で声を出すだけでも恥ずかしいのに、腹筋がどうとか、発声がどうとか…………正直、辛かったです。やっぱり私には向いてないのかもって、何度も挫けそうになりましたから。
そんなとき、千早ちゃんがすっごく励ましてくれて。
……ふふっ。そうそう。確かにあの頃の千早ちゃんって、あんまり皆とおしゃべりしたりする娘じゃなかったですもんね。でも、私にはよく話し掛けてきてくれたんですよ?
貴女の歌声は素晴らしい、のびやかで豊かで天性のものを感じる、必ず優秀な歌い手になるって……ビックリしました。あんなに歌が上手な娘から、今までの人生でも経験がないぐらい褒めちぎられたんですもの。
それで千早ちゃんが『普段の生活から極意を学びたい』って、少しの間ですけど私の家で一緒に暮らしてくれて……ふふっ♪楽しかったなぁ。なんだか妹が出来たみたいで、とらたんともいっぱい遊んでくれて…………♪
そのおかげで私、なんとか苦しい時期を頑張れたんです。
あの千早ちゃんが褒めてくれたんだから、簡単に諦めちゃダメよ~って思えましたから。
今思えば、アレは千早ちゃんの優しさだったんでしょうね。ダメダメな歳上を不憫に感じて、あんなお世辞を……本当に優しくて良い娘ですよねぇ。千早ちゃんって。
……多分本心だったと思う?
ふふっ♪プロデューサーさんっ。もう私、ちゃーんと壁を乗り越えましたから。今はそういうお世辞、なくても大丈夫で~すっ♪
ボイトレ【三浦あずさ】