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ベシッ
それを言うなら『こんばんは』でしょ。っていうか、そんなバカっぽい挨拶するぐらいなら、いっそしない方がマシなんだけど?
はぁ、なんだか心配して損しちゃった。ま、そんなボケをやるぐらいの余裕があるなら、どうやら本番は安心して隣にいられそうねー?あー、よかったよかった。
……ふんっ。知ってるわよ。緊張しすぎて変なテンションになってることぐらい。どんだけ一緒に過ごしてきたと思ってんの?
ただ、お父様とお母様の前で今のノリをかましたら本当に○すから。そしたらアンタの最後の晩餐は、さっきコンビニで買った激安レーズンパンよ。わっびしー。
ったく、そうじゃなくて……まずは私たちが付き合ってるっていうのを、アンタの口からちゃんと伝えるべきでしょ?
そしてアンタが私のパートナーに相応しい人間だっていうことを、お父様とお母様にじゃんじゃんアピールするわけ。どういうわけか二人とも、アンタへの評価が低くないし……上手くいけば、一気に水瀬家公認の関係になれるってわけよ。
つまり、最初にズバッと言えるかどうかでアンタの男としての評価が決まるの!逆にうじうじなよなよ尻込みしてるようじゃ、お父様たちは絶対に認めてくれないわ。
特にお父様は、そういうのめちゃめちゃ厳しいんだから。水瀬をここまで大きく育てただけあって、咄嗟の決断力とか判断力を重視してるっていうか……あ、そうそう。お母様だってアンタの前では愛想よくしてるけど、あれで結構キツいところがあるのよ?この前なんか…………
って、ちょっとー!なにさっきよりもガチガチになって……ばかっ!人の家の前で変なダンスを踊るなっ!!どんだけテンションおかしくなってんのよ!!
えぇい、こうなったらごちゃごちゃ考えるより行動あるのみよ!パーッと挨拶して、パーッとアピールして、パーッと終わりましょう!?
心配ないわ。だって今日はクリスマスなんだもの!サンタさんだって、カップルの成功を後押ししてくれるに決まってるじゃない!!
そ、それに…………
……それに、私知ってるから。普段は頼りないけど、アンタがここ一番ではカッコよく決められるヤツだってこと…………
そ、それじゃ行くわよ!?それーーーっ!突撃ーーーっ!!
【し、失礼しますっ!!】