ハデハデな美希の一番のお気に入りの場所……それは何てことない公園の池、なのよね?
美希「うん。だってここにはほら、カモ先生がいるの。ミキのノンビリの師匠だし、カモ先生がいるこの公園が一番のお気に入りスポットなんだ。」
ノンビリの師匠ねぇ……それで?師匠に相談しにきたってわけ?
美希「んーん。なーんかカモ先生の顔が見たくなっただけなの。ぷかぷかって浮いてるカモ先生を見て、ミキもちょっと考えたいなって。」
ふーん……んで、何を考えたのよ。
美希「……ミキね?自分で言うのもなんだけど、結構甘やかされて育ってきたの。パパもママも公務員でお給料安定してるし、ミキはミキの好きなことを好きにやっていいよって。だからミキ、ずっと自分のアンテナどおり生きてきたんだ。好きなことをやって、嫌なことはやらない。アイドルも好きだからやってたし、今回ので嫌になったから辞めようと思ったし。でも……」
でも?
美希「……どうしても皆とのレッスン、忘れられなくて。レッスンは大変だし辛いし、サボっちゃいたいって思ったことは何度もあったけど……それでもキラキラしたミキを皆に見てもらうんだって思うと、ドキドキワクワクしたの。だから竜宮小町に入って、絶対にキラキラするんだって思ったのに…………」
はぁ……バカねぇ。竜宮小町はアンタらよりちょっと早く売れただけで、社長やプロデューサーはアンタらのこともしっかり売り出してくれてたでしょうに。竜宮小町単独ライブじゃなくて、765プロ感謝祭として全員ライブにしたのが何よりの証明じゃない。
美希「でも、皆は竜宮小町を見にくるわけでしょ?ミキたちなんてオマケだし、誰もオマケのことなんか興味ないもん。そしたらプロデューサーがね?皆は絶対に竜宮小町みたいにキラキラしたアイドルになれる、一番側で見てる俺が保証するって……あーんなに失敗ばかりで、ミキたちのことなーんにも知らないのにね。」
あら、それにしてはアンタ、真剣な顔して聞いてたじゃないの。それはどうして?
美希「……なんだかミキのアンテナがビビビッて反応したの。お昼にナンパしてきた男の人たちと比べると、おしゃべりも下手だしパッとしないのに……ずっとずっとず~っと。」
……ま、わかるもんよね。上っ面だけで喋ってるヤツと、本当に心から言葉を出してるヤツとの違いって。
美希「……本当はね、竜宮小町じゃなくてもよかったの。確かに竜宮小町はキラキラしてたし、同じ衣装を着た自分を想像したらドキドキワクワクしたけど……皆とライブに向けて頑張ってた時、同じぐらいドキドキワクワクしたんだ。もしかしたら、竜宮小町のことを考えてた時よりも…………だからミキ、プロデューサーに約束してってお願いしたの。」

美希「ミキのこと、竜宮小町みたいにしてって。もう嘘はつかないでねって。ミキのこと……もっとドキドキワクワクさせて!本当のアイドルにして!!……そしたらミキ、また頑張れるからって。」
……ワガママなヤツ。ひとつだけって言ったくせに、4つもお願いしてるし。
美希「えへへ……言ったでしょ?乙女心って、すっごく複雑なのっ!あはっ☆」パチッ
ふふっ……アンタらしいわね。それじゃ、次がラストシーンよ?張り切って……
美希「いっくのーーー!!」