二人で夕飯のお買い物……って、千早は随分手慣れてるわね。さすが一人暮らしなだけあるわ。
律子「千早って元々は歌のために……って、食事にも結構気をつけてたんだけどね。いつの間にかサプリメントで補えば十分って考え方に変わっちゃったみたい。」
ま、料理って意外に手間だからね。外食が続くとお金的に厳しいし……新人アイドルにとって、落ち着くべきところに落ち着いたって感じじゃないかしら。
それにほら、ゲロゲロキッチンの収録以降はたまに作るって言ってるじゃない。そんなもんで十分でしょ。
律子「うーん……まぁ本人がそれでいいって言うなら、そこまで口を挟むことでもないけれど…………やっぱり心配なのよね。この娘については。」
アンタ、千早には甘いもんねー。年下なのに呼び捨て許してるし……美希が拗ねてたわよ?
律子「だって、そうでもしないと永遠に距離が埋まらなそうだったんだもの。それぐらい入社当時の千早は他人との交わりを拒絶してたし……っていうか、そもそも年下から呼び捨てにされたくないわけじゃないわよ?美希のアレは躾なの。し・つ・け!」
あらあら。よく出来たお姉ちゃんがいて、千早も美希も幸せ者ね。あ、そうこうしてる間に千早の家に着いたみたいよ?

律子「殺風景な部屋ね……引っ越した時から時間が止まってるというか、楽譜やCDがある以外に生活感がないというか…………って、伊織。どうしたのよ。眉間に皺を寄せちゃって。」
……ねぇ、なんか鍋やフライパンに使った痕跡がないんだけど…………アイツ、さっきたまには料理するって言ってなかったっけ。鍋もフライパンも使わない料理って、いったい何があるの?
律子「あっ……なかなか鋭いじゃない。そっか。千早ったら、春香に心配をかけまいとして…………」
はぁ……バレバレだっての。ほら、春香も台所をチラッと見てたし、きっと気づいてたわよ。なんで指摘しないのかしら。
律子「ま、二人が友達だからじゃない?友達だからこそ、余計な詮索はしないものよ。」
ふーん……なーんか頭ではわかっても、どうしてもモヤモヤしちゃうわね。そういうのって。
律子「この頃と比べると、今の千早って表情も随分明るくなったわよね。なんかこう……本当によかったなって…………」
そうね……って、やだ。なんか湿っぽくなっちゃったわ。
さっさと次のシーンにいくわよ!