も、もう……しんどい…………叫びすぎて喉もカラカラだし……間違いなく過去最高に辛い回だわ……今回の収録…………

響「ほ、ほらっ!伊織!あとちょっとだぞ!一緒に頑張ろ?ね?」

貴音「水瀬伊織……どうやら貴女には、欠けているものがあるようです。それは『覚悟』です。自分の壁を突き崩すという覚悟を持ちなさい。」シジョッ

うっさい!その台詞は今回の話じゃないでしょ!?ったく……えーと、このシーンは…………夜中にね、春香と真が夢を語ってたのよ。来年には冠番組がどうとか、CDのヒットがどうとか、トップアイドルがどうとか……そんな大きすぎる夢をね。

響「ふーん……なんかいいね。自分はこの時寝ちゃってたけど、修学旅行の夜みたいでワクワクするぞ!」

よくないわよ。この時の私たち、最初にも言ったけど学校の部活動みたいなもんだったじゃない。全然仕事もないし、オーディションには落ちまくってたし……だから、私つい口を挟んじゃったの。夢みたいなこと言ってんじゃないわよーって。

貴音「……夢とは時に残酷なものです。励ますように温かく道を照らしたかと思えば、背中に重くのし掛かり歩みの邪魔をする……伊織は夢を抱くことの残酷さを、自ずと理解していたのでしょう。」

……さぁね。そんな小難しいこと考えてたかしら。伊織ちゃん、わっかんなーい。





でもね、そんな夢みたいな夢が叶ったら素敵だなって……確かに思っちゃったのよ。だってどんなに重い夢だって、皆で持てば軽くなるでしょ?

だから、皆でフォローし合っていければ……って、これじゃ春香のことを笑えないわね。まるで甘すぎて、とてもじゃないけど私の舌には合わないわ。

響「……自分たち、この時からは考えられないぐらい売れっ子になってきたよね。この時の夢に、少しは近づけてるのかな。」

貴音「えぇ、もちろんです。ですが……春香が言ったように、忙しくなってきたからこそ変わってしまうものもあります。たとえば皆で海に遊びに行く……そんな些細なことすら容易に出来なくなってきたように。」

……仕方ないでしょ?だって私たち、アイドルなんだもん。皆で遊びに行けなくなるぐらい忙しくなってきたことを、むしろ喜ばなくっちゃ。

響「うぅ……わかってる……それぐらい自分だってわかってるけど……そんなの、そんなの寂しいぞ…………」グスッ

貴音「響……伊織、そろそろ次に参りましょう。貴女が言っていたように……後はその時になってから考えればよいのです。『幽霊の正体見たり枯れ尾花』、考えすぎることで必要のない恐れを抱くこともありますから。」

うん……そうよね。はぁ、なーんか湿っぽくなっちゃったわ。最後ぐらい、カラッと爽やかに行くわよっ!!
アニマス0511