あぁ、もうこんな時間なんですね。最近は日が長くなってきたので、少し油断していました。

それではプロデューサー、また明日もご指導よろしくお願いします。



……そうですね。以前はもっと遅い時間までレッスン場に残っていることが多かったと思います。なにせ家に帰ったところで、私を待ってる人は誰もいませんでしたから。

成果を挙げられて充実した気持ちで帰っても、家に帰ればひとりぼっち…………もともと一人の時間は嫌いではありませんが……たまに思っていました。もし私がこのまま消えてなくなってしまったとしても、しばらくは誰も気がつかないんだろうな……と。

一度そういう気持ちになると、過去の嫌な記憶ばかりが蘇ってきて……それを誤魔化すために、明るいポップスを普段より大きめの音量で流すんです。
よく聴き込んでしまうと私とあまりに掛け離れた前向きな歌詞に気がついてしまうので、出来るだけ流し聴きをするようにしていました。こんな聴き方、その曲にも失礼ですよね。

よくマスメディアから『孤高のアイドル』なんて呼ばれ方をしましたが……本当の私は単に孤独で、ひとりぼっちで…………このまま一生こうして過ごすんだろうなと、そう思いながら夜を過ごしていたことを覚えています。



……でも、今は違います。今の私には信頼できる仲間たちが、プロデューサーが……本当に消えてなくなってしまいそうなときに支えてくれた、765プロという家族がいますから。

それに、夜だって…………ちひゃー!そろそろ帰るわよー!

ちひゃー「くっ!」



トテテテテッ……ピョンッ!



ふふっ、まだまだ元気いっぱいね。そんなに元気だったら、今日のお歌の教室は少し難しめのものにしようかしら。できる?

ちひゃー「くっくー!」フンスッ

ふふっ、期待してるわ…………ねぇ、ちひゃー。いつもありがとう。

ちひゃー「くぅ?」

んーん、わからなくていいのよ。それではプロデューサー、ちひゃーが待ってくれているので……お先に失礼しますっ♪
こんばんは【如月千早】