そうっ!春香の……はぁっ!?アンタ……ばっ……な、なんでそうなんのよ!

いいこと!?私は急いでるのっ!時間がないのっ!!だから事務所よりも近い場所を提案してるのに、どうして春香の家になるわけ!?アイツ、神奈川から毎朝二時間かけて事務所に通ってるんだけど!?

っていうか、なんとか家に着いたところで「……え、なにしに来たの?」ってなること間違いないわよ!さすがのアイツも!お人好しクイーンのアイツも!そりゃそうよねっ!!ドラマ、とっくに終わってるもんね!!「急にアンタの顔が見たくなっちゃって……きゃはっ☆」……じゃないわよ!ばかっ!このばかっ!!



そうじゃなくて、私の家と言えばアレよ!アレ!ほら、Cランクに上がった辺りで借りた……そう、家出部屋よ!!

あそこならギリギリ放送前に着けそうだし、テレビもお茶もあるからまったり寛ぎながら私の雄姿を鑑賞できるわ!ほら、わかったらキリキリ車を動かすっ!ハリーアップ!!



……は?番組を見終わったらまた迎えに来るって……なに言ってんのよ。アンタも一緒に見るのよ?当然じゃない。

アンタねぇ、担当してるアイドルの主演ドラマよ?私の横で涙を流しながら褒め称えるのも、アンタの重要な仕事でしょうが。ったく、そんな常識的なことから教えないといけないなんて……ほーんとポンコツなプロデューサーね。

ほら、ワックスとサングラスよ。これでガッチリ強面に決めちゃえば、セレブなお嬢様を守る黒服SPの出来上がりってわけ。これなら週刊誌のハイエナどもに嗅ぎつけられたところで、どうとでも言い訳がつくでしょ?ふふんっ♪伊織ちゃんってば、あったまいーーーっ♪

さ、善は急げよ!ちゃっちゃとセットして、ちゃっちゃと家出部屋にレッツゴーーー!!

【……承知いたしました。お嬢様。】
ある日の恋人たちの風景03