そうっ!私の家よ!わかったらさっさと……
って、ちょっと待った!アンタ、まさかとは思うけど私の家って…………
ば、ばかなの!?水瀬家なんて、ここから事務所よりもさらに遠いじゃない!タクシーで移動したら三千円以上かかる距離よ!?……えぇ、そうね!私の初ギャラよりも余裕で高いわよ!ばかっ!!
そうじゃなくて、私の家って言えば水瀬家以外にもうひとつあるでしょ!?ほら、Cランクに上がった辺りで借りた……そう、家出部屋よ!!
あそこならギリギリ放送前に着けそうだし、テレビもお茶もあるからまったり寛ぎながら私の雄姿を鑑賞できるわ!ほら、わかったらキリキリ車を動かすっ!ハリーアップ!!
……は?番組を見終わったらまた迎えに来るって……なに言ってんのよ。アンタも一緒に見るのよ?当然じゃない。
アンタねぇ、担当してるアイドルの主演ドラマよ?私の横で涙を流しながら褒め称えるのも、アンタの重要な仕事でしょうが。ったく、そんな常識的なことから教えないといけないなんて……ほーんとポンコツなプロデューサーね。
ほら、ワックスとサングラスよ。これでガッチリ強面に決めちゃえば、セレブなお嬢様を守る黒服SPの出来上がりってわけ。これなら週刊誌のハイエナどもに嗅ぎつけられたところで、どうとでも言い訳がつくでしょ?ふふんっ♪伊織ちゃんってば、あったまいーーーっ♪
さ、善は急げよ!ちゃっちゃとセットして、ちゃっちゃと家出部屋にレッツゴーーー!!
【……承知いたしました。お嬢様。】