━━グレイル傭兵団に来たってとこか。
ワユ
「……」
何かしらの反応があると思い待ち構えたが、彼女は沈黙のままだった。
埒があかないので、呼び掛けてみる。
ワユ
「……はっ!?
あ、ああ……うん、もちろん聞いてたよ
そっかー、ガリアのツテでここまできたのかー」
当たり障りのない感想を述べるも、ワユが受けている驚愕は間違いなく別のところに向けられている。
ワユ
「ええっ!?
そんなことないよ!
いやさ、ただ……」
話の中で出てきた最後に戦ったベオクがワユだった、とか?
それはないだろうと思いながらも、からかうつもりでそう問い掛けてみた。
ワユ
「……やっぱ覚えてたんだ」
……?
予想しない返答に固まる俺を他所にワユは続ける。
ワユ
「戦いが落ち着いて、城の見張り台から戦況を覗いてたらさ
やけにガリア兵の人だかりが見えたんだ
そしたらその中心に血塗れの戦士が居て……思わず目を奪われた
強さとか、技とか、そういうのじゃない
あんたの執念に目を奪われた
戦うこと、勝つこと、その他いろいろなものへの執念にさ」
……執念。
彼女の一言で納得がいった。
そうか。
俺があの戦いで取り憑かれていたのは執念だったのか。
最強を目指し、団長の背中を追い求めた残梓。
捨てられなかった夢への執着が、俺の足を止めていたんだ。
なんとも……我ながら馬鹿な男だ。
あの時の自分の背中を思い浮かべる。
何故か、酷く懐かしい思いがした。
ワユ
「で、居ても立ってもいられずに飛び込んだってワケ
ま、あたしが勝ったんだけど」
胸を張るワユの言葉に現在へと思考が引き戻される。
ふと、違和感がよぎったからだ。
……ホントにワユは俺に勝ったのか?
ワユ
「ええっ!?
あ、当たり前じゃん!
あたしそんなウソつかないしー!」
怪しい。
ひじょーに怪しい。
あの日の記憶がおぼろげなためこれ以上の追及は避けるが、嘘はついていなくとも細部をぼやかしている気がする。
ワユ
「その目は納得してないって目だね
ならここで白黒はっきりさせようじゃんか!」
上等だ。
売られたケンカは買わなきゃ傭兵失格だ。
そうして俺は剣を手に取り。

アイク
「やかましい!
お前らいつまで騒いでるんだ!」
……仲良く団長に鉄拳制裁されたのだった。