自分の傭兵としての始まりはそんなに珍しい話でもないさ。

父は傭兵、母は酒場の看板娘。
住まいはさして大きくもない町の合同宿舎。

手を着けて子どもが出来ても関与せず、ということだって珍しい訳でもないことを考えれば、父親は実に誠実であった。

母と婚姻関係にはならなかったものの、親子二人が十分に食えるだけの金銭。

頻繁に顔も見せに来ていたし、主観にはなるが十分に愛してくれていたと思う。

父が籍を置く傭兵団も、盗賊崩れのならず者という訳でもなく、それなりの評判と町1つを根城にするほどの規模を持つ団。

そんな環境で生まれ育ち、父やその友人に憧れて傭兵を目指すようになったってだけだ。

明日の食い物すら危うい。
そんな幼少期を持つ孤児に比べれば己は恵まれていた方だと思う。

あともう1つ恵まれていたのは、自分に戦う才能があったということだ。

外伝1