「よっ……と。

どう?
○○、これであってる?」

(ワユに修行をつける
基本的なことを教えてみることはあっても、技を教えるのは今日が初めてのことだった)

「ん……ちょっと違う?
じゃあこう……かなっと!」

(技を教えてくれ
いつもの手合わせが終わった後、ワユに懇願され、1つ教えることにしてみた)

「お、初めはあってるんだね?
んじゃあ、ここから……こう!」

(初めて手合わせしたときから思っていたが、彼女の才能は凄まじい)

「おっ?いまの良い感じじゃない?
じゃあ○○がいつも仕掛けてくるあの技は……こうか!」

(一度使った技を見切られるのは、達人相手にままあることだった
だが、まさか一見しただけで技を盗んだのは彼女が初めてだ)

「そ、そんなに褒めないでよ。
あたしなんかまだまだだって。」

(感嘆は自然と口から漏れ、彼女の耳に届いていた
何となく、むず痒い気持ちになる)

「ううん、ホントのこと。

白状するとね。
○○と戦うまでは実力が頭打ちになってたんだ。
誰と戦っても、どれだけ剣を振っても強くなれた気がしなかった。」

(そんなことはない、と言いかけて口をつぐむ
研鑽を重ねる剣士にとって、努力に対する慰めは侮蔑と同意だ
彼女みたいなタイプには、特にそうである)

「でもね!
○○と戦ってからは世界が変わったみたい!
あんたの繰り出す技の1つ1つが、全部あたしにとって衝撃的だった!」

「技だけじゃない。
○○が見てくれるようになってから、剣の冴えが全然違うんだよ!

誰かに剣を見てもらいたい!って思ったのも初めて!」

(晴れやかな笑顔で彼女は続ける)

「だから!
もしかして○○が運命の相手なんじゃ、って思うようになったんだ!」

(……運命の相手
彼女に似つかわしくない衝撃的な台詞に、自然とおうむ返しに呟いていた)

「そう!
あたしの一生のライバルになる運命の相手!
いつか現れる、って占いにあったんだよ!」

(そう言われ腑に落ちた

失礼だが……彼女には少々似合わないロマンチックな単語が飛び出してきたため、面食らってしまった

が、なるほどそういう意味か
それなら、まあ彼女らしいと思える)

「おっと、話が逸れちゃったね。
んじゃ、次!次の技教えて!」

(……これ以上盗まれてしまっては、そろそろ勝ち星が逆転されてしまう
言い訳がましい気がするが、適当な理由を付けて断っておく)

「ちぇーケチ!

でも……ま、いっか。
何でもかんでも教えてもらってちゃ身にならないしね。」

「よーし!
さっそく次は実戦だ!
今度こそ、○○に勝ち越してやるからね!」
ワユ支援B