(ふと、ある日のこと
グレイル傭兵団を知った日から、聞きたかったことをアイクに問う機会があった)
「……戦術?」
(入団してからは小規模な戦いばかりのため、個々の力で押し切るような戦いばかりだった
しかし同戦力、同程度の相手と対峙した際はグレイル傭兵団はどのような戦術をとるのだろうか?)
「そういう話は俺じゃなく、セネリオとした方がいいんじゃないか?」
(いや、これは団長に聞かなければいけないことである
策を提示するのは軍師の役目
だがそれは団や軍の基本方針のようなもの、いわば戦略を根幹にしているはず
防御戦闘を得意とする団もあれば、攻城戦や潜伏、奇襲を得意とするような専門的な傭兵団だってある
そういうところが知りたいのだ
常勝無敵のアイク将軍はどのような戦略を基本とするのだろうか)
「戦略、か。
考えたことはないな。
そもそも俺は軍を率いるのには向いていない。
真っ直ぐ突っ込み、先頭に立ち指揮官を討つ。
よくてこんなところだろう。」
(……常識を打ち破られるのは予想していた
前戦役のさいに、圧倒的不利な盤面をひっくり返したことを耳にしたこともあった
だからこそ、こちらの度肝を抜く天才的な采配を語るのだ、そう勝手な期待をしていた)
(だが、現実は違っていた
彼は、どこまでも個の力だけで多くの戦場で勝利を成し遂げたのだ
そこには戦略も戦術も何もない)
「……どうした?
顔色が変だぞ。」
(常識を引っくり返されるのは最近多かった気がするが、今日のは一段とキツイ
結局は英雄の力なのか
圧倒的な力には、弱者は軍勢をもって戦うことですら並び立てないのか
目指すべき頂は、己の想像の遥か上ということを思い知らされたのだ
……今日はもうこれ以上は話す気が起きない
アイクに断りを入れて、退席することにしよう)
「そうか。
難しいことは語れんが、俺に答えられることならいつでも聞いてくれ。」
(……今度からは変な回答が飛び出さない質問にしておいたほうがいいかもしれない)
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