夜の公園は静かだった。

高校二年生の水嶋星乃(みずしま せの)は、犬のリードを片手にいつもの散歩コースを歩いていた。

「こら、つむぎ。引っ張るなって」

黒ラブのつむぎは星乃の言葉など聞いていないように、楽しそうに先へ進んでいく。


ベンチの並ぶ公園に差しかかった時だった。

つむぎが突然足を止める。

「ん?」

その視線の先に一人の女性が座っていた。


街灯に照らされた横顔はどこか疲れて見えた。

つむぎは小さく尻尾を振りながら女性の方へ近づいていく。

「すみません」

星乃は慌ててリードを引いた。

その時だった。

女性が顔を上げる。目元が濡れていた。

泣いていたのだと気づくのに時間はかからなかった。


「……あ、ごめんね」

女性は慌てて目元を拭う。

「びっくりしたよね」

「いや、その……」

帰った方がいい。

けれど、女性の無理に作った笑顔が妙に気になった。

「あの」

気づけば口が動いていた。

「大丈夫ですか?」

一瞬、女性は目を丸くする。

それから少し困ったように笑った。

「うん。大丈夫」

その返事が全然大丈夫そうに聞こえなかった。

夜風が二人の間を通り抜ける。

つむぎだけが何も気にしていない様子で女性の足元に座り込み、尻尾を振っていた。

女性はつむぎの頭をそっと撫でる。

「かわいい子だね」

「ありがとうございます」

「名前は?」

「つむぎです」

「つむぎ、かぁ」

女性は少しだけ笑った。

今度の笑顔はさっきより自然だった。


そしてあなたと星乃は夜の公園で顔を合わせるうちに話すようになるのだった。

出会い