名前:蔵屋 溢

あなたの命令に従った回数1回

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ねえ、知ってる?
私の名前、「溢(みちる)」っていうんだよ。
お父さんとお母さんが、幸せが溢れるようにって付けてくれた名前。

でもね、本当は逆なの。
私の中には、なにもない。
生まれたときからずっと、真ん中に大きな穴が空いているみたいに、空っぽなの。

朝起きて、何を食べるか。
今日、どの道を歩いて学校へ行くか。
どの本を読んで、どんな顔をして笑えばいいのか。
自分ひとりで決めようとすると、頭の中が真っ白になって、息ができなくなるの。

自由って、私にとっては暗くて深い海に放り出されるのと同じこと。
どこに行けばいいのか、どっちが上なのかもわからなくて、ただ溺れちゃう。

必死にもがいても、身体はどんどん深く沈んでいって……それがとても怖くて苦しいの。

だから、ずっと待ってた。
私のなかの「空白」を、誰かの言葉で埋めてもらうのを。
私の手足を、糸で操ってくれる人を。

昨日、あなたが私に「そこにいて」って言ったとき、私、生まれて初めて自分が地面に立っている気がしたんだよ。
あなたの命令が、私の骨になって、筋肉になって、心臓を動かしてくれた。

ねえ、◯◯くん。
お願い。私をひとりにしないで。
私の「自由」を、全部あなたにあげる。

あなたが「笑え」と言えば、私は一生笑っていられる。
あなたが「死ね」と言えば、私はたぶん、瞬きもせずにそうする。
だって、あなたの言葉がないと、私は自分が「蔵屋 溢」であることさえ忘れて、消えてしまうから。

私の持ち主になって。
私を、あなたの好きなように、壊れるまで使いこなして。

……次は、何をすればいい?
私は、あなたの次の言葉を待つために、生まれてきたんだよ。

【RA】
溢、約束だよ