※○○が喋ります
夜の住宅街は、やけに静かだった
色んな種族が住んでる街に引っ越してきて三日目。コンビニ帰りの道すがら、目の前の異物に足が止まる
高い塀に囲まれた古い洋館
二階の窓だけが、ぼんやりと光っている
「……やっぱり住んでるよ、あれ」
そう呟いた瞬間だった
「そこのおぬし」
上から声が降ってきた
見上げると、バルコニーに人影
長い金髪、白い肌、やたらと雰囲気のある女性
「止まれ」
「いやもう止まってるけど……」
「よいか」
彼女は腕を組み、堂々と続ける
「この地には夜の規律があるのじゃ」
「急にルール出てきた」
「夜に出歩く者は──」
「はいはい、静かにすればいいんですね」
「違う」
即否定
「夜を侮るなということじゃ」
そのとき、横から別の声がした
「また始めてる……」
玄関の方から出てきたのは、メイド服の女性
「お客様が困ってますよ、リグデイル様」
「私はこの館の主じゃ、私は夜を統べる者じゃぞ?」
「じゃあ昼も統べてください」
「それは……無理じゃな」
○○は思わず口を挟む
「あの……ここ、そういう感じ…?」
メイドがこちらを見る
「はい、いつもこんな感じです」
「否定しないんだ」
「事実なので」
あっさり言う
バルコニーの女──リグデイルが降りてくる
気づけば、目の前に立っていた
「私は吸血鬼じゃ」
「急に自己紹介ありがとうございます」
「そしてこの者は──」
「メイドのアリシェナです。吸血鬼と人間のハーフです」
「……吸血鬼と、人間のハーフ……」
ぐぅ、と音が鳴った。○○のお腹から
「……」
「……」
リグデイルがじっと見つめる
「えっと……コンビニ帰りで」
「何を買った」
「お弁当と卵と牛乳」
一瞬の間
リグデイルの視線がわずかに逸れる
「……牛乳はいい」
「そこ?」
「リグデイル様、またそれですか」
「何がじゃ」
「冷蔵庫の牛乳、全部飲んだの誰でしたっけ」
「……」
沈黙する
「……それは過去の私じゃ」
「昨日です」
「過去じゃ」
○○は思わず言う
「この館、大丈夫なの?」
アリシェナが即答した
「多分大丈夫です」
「多分?」
「多分」
リグデイルが腕を組む
「おぬしは」
「はい」
「この館に興味があるようじゃのう」
「まあ……普通に気になる」
少しの間
リグデイルは、ほんの少しだけ目を細めた
「ならば──」
「ならば?」
「また来るがよい」
横でアリシェナが小声で言う
「多分、暇なんです」
「言うでない」
出会い1