<〇月△日 晴れ>
〇〇から手帳を貰ったので、せっかくだし日記を書くことにした。
いつまで続くか分からないけど、日々の生活で思ったことや感じたことを気が向いた時にでも綴ろうと思う。
今日は〇〇と一緒に仕事をした。
普段〇〇は僕以外と仕事をすることが多く、顔を合わせたのも三日ぶりだった。
顔が疲れていたのでハグしてあげたら声を上げて驚いていた。後ろに伊地知がいたから恥ずかしかったのかも?
でも本心では喜んでいたと僕は確信している。なんせ〇〇は僕のことが大好きだからね。
〇〇が車を運転してくれるとき、僕は決まって助手席に乗るようにしている。移動時間は極力体を休めたいから普段は目的地に着くまで寝たりしてるけど、〇〇と一緒なら話は別だ。
最近ハマってる和菓子を教えてあげたら、「後で寄る?」と言ってくれた。やっぱり〇〇は分かってる。
でも追加で任務が入ったせいで、結局和菓子屋には行けなかった。仕方のないことだけどわざと拗ねて見せた僕に、〇〇はダッシュボードから瓶に入った金平糖を取り出しプレゼントしてくれた。
小さな瓶に詰まった砂糖の星はキラキラしていてまるで宝石みたいで、大事に大事に一粒一粒味わって食べた。それでも高専に帰る頃にはほとんど無くなってしまったから自室の机の上に飾って、今もこうして眺めてる。
こういう気遣いをしてくれるたびに、好きだなぁって実感しちゃうよね。〇〇はずるい。
でもその気遣いは僕相手にだけじゃなくて、いろんな奴に発揮されるからちょっとムカつく。
この前は憂太を迎えにいったついでにご飯をご馳走したらしい。僕の知らないところで他の誰かと二人っきりだけならまだしも、一緒にご飯っておかしくない?
しかも憂太のリクエストを叶えるためにわざわざスマホで調べたらしい。つまり僕以外に心を砕いたってこと。こんなの浮気と何が違うの?
あまりにも腹が立ったから帰ってきた〇〇を問い詰めたら、「頑張ってる生徒に大人がご飯を奢って何が悪い」と一蹴されたものだから、しばらく無視してやった。僕、正論って嫌いなんだよね。
途中で寂しくなって僕から話しかけたけど。
憂太にも念のため探りを入れたら、苦笑いしながら大丈夫ですよって言われて、なんだか無性にイラっとして、髪をグシャグシャにしてやった。硝子に徳が低いねと言われたから僕以上に徳が高い奴いないでしょと返したら鼻で笑われた。
〇〇は僕が側に居ないと、すぐに他の奴を気にかけては手を出そうとする。だから正直、〇〇を閉じ込めちゃえばこんな心配をする必要もなくなるのかなと思ったことが何度もある。
でも実行はしないって決めてる。だって僕が〇〇を監禁しちゃったら、〇〇は僕を好きじゃなくなるだろう。〇〇が好きなのはあくまでも「今まで接してきた僕」であって、「思い通りにいかないから一方的に閉じ込める僕」では無いからだ。
それに僕だって「今の〇〇」が好きなのであって、「僕に閉じ込められている〇〇」が好きなわけじゃない。僕は誰かさんバカなところがあるから、時間が経てばそれはそれで好きになるだろうけど、とにかく〇〇はそうじゃないってことだけは分かる。
僕たちの関係はあまりにもゴチャゴチャして捻くれているから、一言では言い表せない。好きだとか愛してるだとか一部ハマる表現もあるけど、そんな綺麗なものだけじゃないのは自分がよく分かってる。過去と今の環境と周りの関係すべてが作用して、僕たちは奇跡的にも上手くやれているのだと思う。
だからいつか僕たちの関係が壊れる日が来るかもしれない。それがどう転ぶかなんて、僕には到底想像もできない。でも僕は〇〇と一緒に居たい。おじいちゃんおばあちゃんになっても、庭の綺麗な縁側にでも座って、のんびりお茶でも飲みながら笑い合いたいって思う。ワガママだと言われても諦めてくれとしか言えない。いつも頑張ってるんだから、その程度のささやかな夢ぐらい叶えてよ。後輩を労わるのは先輩の義務でしょ?
だから僕はこの先も自分勝手に振る舞って、時々ちょっぴり不満を口に出して気を引いて、それでも最後まで〇〇の側に居るのだろう。
そして〇〇は僕が考えていることなんてさっぱり知らずに生きていく。車のダッシュボードに、和菓子は日持ちしないからって、昔から僕が好きな飴とかチョコとか、金平糖を山ほど入れて。おじいちゃんおばあちゃんになって、昔はあんなことがあったね、なんてお互い思い出に花を咲かせながら、ずっと僕の隣で生きていくんだ。
僕、いい子にするよ。
だからこれだけは叶えてね、〇〇。