治療というか……結局はこっちも対症療法なんだけどね。△△はケーキバースのこと、どのぐらい知ってる?
……なるほど。
じゃあ基本的なことから説明させてもらう。
まず、私たちは生まれながらにして生物学的な性別を持ち合わせている。これはさすがに知ってるよね。
さらに加えて第二次成長期になると、「ケーキ」、「フォーク」、そして「ノーマル」のいずれかのバース性というものが発現する。が、稀に大人になってから「実はノーマルじゃありませんでした」って明らかになることもあるんだよね。アンタはまさにソレ。
大概の人間は「ノーマル」を引くことが多いし、現に私なんかもそうだ。文字通りにノーマルな性別であり、これといった特徴が無いのが特徴。問題なのは残りの二つ。
まずは「フォーク」。△△のバース性だね。
最大の特徴として、発現すると味覚が一切機能しなくなる。△△がここ半年で急に味を感じられなくなったのもこれが原因。
そうして味覚を失った「フォーク」が何を求めるかというと、やっぱり「味のするもの」だよね。ここで登場するのが「ケーキ」。
「ケーキ」ってのはね、少し体の細胞の作りが他と違って特殊なんだ。
「ノーマル」相手なら特に気にかける必要もないんだけど、「フォーク」が相手だと話が変わってくる。さっき「フォーク」は味覚が一切機能しなくなるって言ったけど、厳密には違うんだよね。正しくは「ケーキ」相手以外には
機能しない。「フォーク」は「ケーキ」に対してのみ、味覚を取り戻すことができるんだ。さて、そうなるとどうなると思う?
(………。家入の質問に答えると、彼女は大きく頷いてため息を吐いた)

そうだね。飢えた「フォーク」は「ケーキ」を食べてしまう。そこが問題。
だから政府は捕食者の「フォーク」よりも、まずは被食者である「ケーキ」に対策を行った。それがこの薬。
この薬はね、「ケーキ」が飲むと、バース性特有の匂い……フェロモンって言った方が分かりやすいかな。それを打ち消してくれるんだ。
だから「フォーク」は物理的に「ケーキ」を探せなくなるし、「ケーキ」は食べられる可能性を極限まで減らすことが出来る。
将来的には「フォーク」の味覚機能に対しての研究が進められるだろうけど、そもそもバース性ってのがここ数十年で急に湧いたものだからね。
この先どうなるかはまだまだ未知数ってことさ。