(ある日の夜。同乗していた術師を寮に送り届けてから、疲れ切った体に鞭を打ち、補助監督専用の待機室へと戻ってきた。今日は適当にゼリー飲料でも飲もうかと引き出しに手を伸ばし──ぱしりと手首を掴まれて、思わず顔を上げてしまう。……こんなことをしてくるのは一人しかいない)

おかえり。
朝にお弁当渡したけど足りなかった?
(思った通りの相手にやっぱりなと思いつつも、言葉の端々に滲む陰険な雰囲気に、はて、と首を傾げてしまう。確かに弁当は渡された。あれだけ「暇があったらね〜」と言っていたくせに、最近やけに五条が自分宛に作ってくるのである。しかし今は夜中だし、昼の一食で持つわけがない。すぐに反対の手で引き出しを開け、ゼリー飲料を手に取りポケットへと突っ込んだ)
(そのまま鞄の中から空になった箱を取り出し、洗い済みなのを伝えて手渡したが、五条は渡された弁当箱を見下ろし、なぜか沈黙している。口から生まれてきたような男なのに珍しく静かだ。ちゃんと美味しかったことを告げ、ついでに休憩時間に立ち寄った和菓子屋で購入したどら焼きを乗せる。味はよく分からなかったが、同乗していた術師は喜んでいたので美味しいはずだ。五条もきっと気に入るだろう。「ご馳走様でした」──そう言って頭を下げ、部屋を出ようとし──ぐい、と腕を強く引かれて、思わず目を見開いた)

ねえ。……最近アイツとよく組んでるよね。
やっぱり仲良いの?
(まるでこちらを責めるような言い方に、訳が分からず硬直する。五条の言うアイツとは、今日組んだ術師のことだろう。しかしもちろん他意はない。仕事なのだから当然だ。……じっとりとした目で睨まれる謂れはないはずである)
前はあんなに一緒に任務行ってたのに、僕と全然組んでくれなくなったよね。
ご飯誘っても乗ってこないし。
(確かにここ最近五条と過ごす時間は減ったが、自分が避けているわけではない。単にスケジュールが合わなかったからだ)
タブレットも、ずっと食べてないって聞いた。
なんでよ。
(タブレットに依存するのを極力抑えたいからだ。そう伝えたくても、掴まれた手首が痛くてそれどころではない。眉間に皺を寄せて五条の手を振り払おうとして──気付けば机の上に押し倒されていた)

本当はもう、分かってんだろ?
僕のことも。タブレットのことも。
だから僕を避けてるんだろ?
(美しいはずの蒼が濁る。──少しでも選択を間違えたら死ぬ。そう思わせるほどの威圧感)
……オマエが「美味しい」って言ったんだ。
もっと食べたいって。幸せだって。
(どこか甘さを含んだ声音にごくりと唾を飲み込み、そして──)

……僕を呪っておいて逃げるなんて、許さないから。
(目元を隠され、何も見えなくなった)
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