う~ん……コレも違う……。
コレは……余計に味が混ざるからナシだな。
(──ああでもない、こうでもない。目の前に出された菓子を次々と消費しながら、夏油が首を横に捻る)
(名付けて「後味を少しでもマシにしよう作戦」を決行することにしたあなたは、夜中であるにも関わらず、夏油に次々と菓子を食わせては無理やり感想を聞き出していた)
というか私、別にそこまで困ってないですよ?
確かに不味いけど飲み込めなくはないし、強くなるためだと思えば我慢できる範囲内だし…。
(バリバリと醤油煎餅を齧りながら夏油が言う。本人がそう言っているのだから納得できれば良かったのだが、それにしたってあの匂いは酷かった。力では及ばないが、それでも自分は夏油の先輩である。後輩の負担は少しでも減らしてやりたいのが先輩という生き物なのだと言えば、彼はそれ以上何も言ってこなかった。……なんとも出来た後輩である)
(しかし非常食用の菓子のラインナップは後味を消すのにあまりよくなかったらしい。とうとう一つだけ残った袋を開けて、夏油の手に握らせる。どこにでも売っている、簡素なフルーツキャンディーだった)
………あ、これは割とイケるかも?
(さっさと包みを解いて口の中に転がした夏油の目尻が僅かに緩む。──完全に打ち消すわけではないが、かなり中和されたらしい。「本当に!?」──興奮しながら立ち上がって顔を近づければ、夏油は僅かに身を引きながらも、こくこくと頷いたまま飴玉を舐めた)
(何故か飴玉を舐めている本人よりも喜んでいるあなたに、夏油はお人好しな先輩だな……とごちる。それでも口の中にある飴玉は、本当に少しではあるものの、不快感を無くしてくれた気がした)

△△先輩。いつものアレ、くれません?
(今日も後輩の教室を覗くと、座ったままの五条と硝子よりも先に、夏油があなたに近付いてきた。あなたは大きく頷き、鞄の中から取り出したフルーツキャンディーを何個か見繕って夏油の手のひらへと落とす。その様子を見て近寄ってきた残りの後輩には別の菓子を渡しつつ、笑顔で立っている夏油の顔をじっと見た)
(……見たところ顔色は悪くない。いつも通り、大丈夫そうだ)
(何やら残り二人からの視線を強く感じたが、次の任務があるので、早々に立ち去ることにした)