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さすがクリスマスなだけあってか平日といえど人が多い。アフターファイブだからか社会人の姿もちらほら見える。…そのほとんどがカップルなのだけど。
中でも一層人が集まっているのはイルミネーションでライトアップされた並木道とその中心にそびえる大きなクリスマスツリーだ。
…今日はこの間見ることが叶わなかったイルミネーションを見に来たのだ。
◯◯はもう既に目の前の景色に夢中になっているようで、ほっといたら人混みに流されてしまいそうだった。
「はぐれちゃったら困るだろ?」と差し出した手は半分建前で。本当は僕が手を繋ぎたかっただけなんだけど、君が嬉しそうに重ねてくれた手を離さないようにとぎゅっと握り返した。
─青に黄色に緑色。様々な色の光が◯◯の横顔を照らしている。僕の視線に気づいた◯◯の「どうしたの?」という声にイルミネーションなんてそっちのけで彼女の事ばかり見ていたことにようやく気づいた。「◯◯に見惚れてた」なんてとてもじゃないが言えるはずもなく、
「さっきからずっとぽけーって口空いてるよ?あはは、アホ面」
なんて照れ隠しにからかったら腹パンをくらった。
冗談だっての……
プンプン怒っている彼女にごめんねと謝りつつ、繋いだ手を引く。
あのクリスマスツリーの元までいつも通りの調子で…でもいつもより少し早い鼓動は隠して。ゆっくりと歩みを進めていった。
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